スタッフレポート

「ブラキシズム患者さんに歯科衛生士ができること」について、勉強会で発表して

                                                                             1)患者さんの徴候に気付こう

 歯を失う原因の多くは、う蝕や歯周病の進行

 →歯を失った結果、咀嚼能力が減少し、咬合のバランスが崩れ欠損が拡大!!

  しかし…

  最近では、そのような患者さんの中に過剰な力が原因で歯を失っている場合があることがわかってきている。

  過剰な力…夜間のブラキシズム、日中のくいしばり、咀嚼時の過剰な咬合力や偏咀嚼etc.

  過剰な力にもかかわらず、患者さんは普通に生活していることが多く、歯科医療者でさえも認識できないこと

  もある。本人にとって日常の習癖になっていれば、なおさら自覚はないもの

   ⇒歯科衛生士が問題意識をもって口腔内を診ることで、その徴候に気付き、適切な対応へと早期に

     つなげることができる。

 

ブラキシズム患者さんに歯科衛生士ができること

◆意識して口腔内を診たり患者さんとの会話から、その徴候に気付く

◆習癖に対する指導

 

 

2)ブラキシズムとは?

①ブラキシズムは異常機能運動

  →アメリカ口腔顔面痛学会のガイドラインでは、昼間または睡眠時の咬みしめ、緊張、歯ぎしり、臼磨運動を

    伴う異常機能運動としている。

    ※特に夜間ブラキシズムは、昼間より意識レベルが低いことから、過大な筋運動が発揮されることに

      よって、顎口腔系にさまざまな障害を及ぼす可能性が指摘されている。

 

②原因はさまざまで、因子が複雑に関連しあって発現する

◆心理社会的因子→ストレスや性格、気質

(ストレス性のライフイベントなどがブラキシズムレベルを上昇させる)

◆身体的因子→身体の疲労や口腔内の咬合異常

(ただし、咬合異常がある人に特徴的にブラキシズムが出現するわけではない)

        ※ストレスや咬合異常がない場合においても、習癖として中枢神経系に記憶されてブラキシズムが

          発現していることもある。

 

③必ずしも異常機能運動ではないとする説もある

 ブラキシズムはすべての人間が行っている可能性があり、ブラキシズムの力が小さく頻度が少ない場合には、

 影響を及ぼさないことが大半。

 →ブラキシズムが過剰力である場合や、ストレスやライフイベントなどが原因でブラキシズムが増強した場合に

   障害が発現すると考えられる。

 

 

3)どの場面でどんな徴候に気付くべき?

①初診時の問診や診査時からわかる徴候

問診

■今までに他人から歯ぎしりの指摘を受け、自分でも自覚している

■歯磨きはしっかりやっているが、いつも歯科医院に通っている

■顎がすぐに疲れてしまい、だるくなる。

■朝起きたとき疲れがとれていない

■口が開きづらいときがある(特に起床時)

■疲れてくると頭痛が度々ある

■修復物など詰めものがよくとれる

■以前に歯が割れたことがあったり、自然に歯が抜けたことがある

■歯がよくしみる

 

 

口腔内診査

■口唇の力が強い

■口が開きづらい

■咬筋が発達して、エラが張っている顔貌

■舌や頬粘膜に歯の圧痕がある

■エナメル質表面の亀裂、欠損、着色がある

■切縁や咬合面の磨耗、ディンプルがある

■修復物の脱離や二次う蝕が多い

■知覚過敏の歯が多い

■下顎隆起など骨隆起が多発

 

 

②治療時にわかる徴候(※中等度以上のブラキシズムを疑ってよい徴候)

■歯肉の炎症の治癒に時間がかかる

■歯周ポケットの再付着が遅い

■根分岐部病変が上下顎左右側に存在する

■隣接面の歯周ポケットより頬舌的な歯周ポケットが深い

■SRP後に知覚過敏がでやすい

■固定がとれやすい

■暫間修復物(レジンテンポラリーレストレーション)の磨耗がひどい、

暫間修復物の脱離、破損が頻繁に起きる

■補綴物仮着中のセメント溶解がすぐに起きる

■歯の動揺が止まりづらい

■特徴的な歯根膜の拡大がみられる

 

 

③メインテナインス時にわかる徴候

■多数歯の知覚過敏や、場所が特定できない歯の痛みを訴える

■特定部位に歯肉の炎症や歯周ポケットが形成されている

■フレミタスや歯の動揺がみられる

■咬耗、磨耗などが顕著になってきている

■顎の疲れや口の開きづらさが出現する

■起床時の顎のこわばりや頭痛、肩首の疲労感を訴える

■ストレスの大きいライフイベントが起きた

 

 

【感想】

咬合性外傷の症状を有する患者さんは、本当にたくさんいらっしゃいます。

私自身もブラキシズムによる咬耗があり、咬合痛や知覚過敏の症状がでることもあります。

様々な障害を及ぼす可能性があるブラキシズムですが、本人に自覚症状のないままに進行していく危険性も

あるため、私たち歯科医療者が十分に口腔内を観察し早期に気付くことで、大きな障害に拡大する前に防御して

いけたらと思いました。

                                                           衛生士 西内 

 

  2013/04/07   ふくだ歯科
タグ:歯ぎしり