スタッフレポート

2022年8月

岡山県歯科医師会医療安全研修会に参加して

新型コロナウイルス感染症に対して歯科医療ができること 

 

・新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)

目、鼻、喉、口腔などの粘膜にある受容体(ACE-2)を介入して侵入し増幅すると言われている。

歯周病などの口腔細菌は喉や口腔粘膜(舌)を保護している粘膜の糖たんぱく質を溶かす分解酵素を

出すためウイルスが受容体に吸着し侵入するのを手助けする

・口腔症状

最も一般的な口腔症状は味覚症害で有病率は45%。 口腔粘膜病変は白および紅斑性プラーク、不規則な

潰瘍、小さな水疱、点状出血、剥離性歯肉炎など。舌、口蓋、唇,歯肉、頬粘膜が影響を受ける。

軽度の症例では口腔粘膜病変は最初の呼吸器症状の前、または同時に発症する 味覚障害が多い理由

としては、舌背の糸状乳頭に新型コロナウイルスの受容体ACE-2が存在するため。歯周ポケットは

ウイルスにとって好ましい生息場所であり新型コロナウイルスの貯蔵庫として機能する可能性がある

ため貯蔵庫を破壊することが重要。

・新型コロナウイルス対策で見落としていた口腔バイオフィルムに由来する3つの重症化要因

① 唾液感染と歯肉出血(BOP)に由来する低酸素症

② 口腔バイオフィルムに由来する黄色ブドウ球菌のスーパー抗原(サイトカインストームの原因)

③ 口腔バイオフィルムに由来する炎症関連物質ガレクチン-3(Gal-3)の産生:(サイトカイン

ストーム、動脈硬化、糖尿病の原因)

口腔粘膜病変は(たぶん)貧血性低酸素症で起きると言われている

貧血性低酸素症:血液の酸素量が低下した状態のこと。

→パルスオキシメーターで計測できるためPCR検査を待つ必要はなく早期発見につながるため

今注目されている。

・感染症の3要因

病原体:歯科診療所でのPCR検査を実現(現在は診断までに75分)

環境:診療所での個人防護具、口腔外バキュームの使用、予約診療で待合の密を防ぐ

宿主:歯周治療による肺炎リスクの低下

殺菌剤CPC配合の製剤が新型コロナウイルスを99.9%不活化すると報告

塩化ベンザルコニウム(BKC 0.05%以上)

塩化ベンゼトニウム(BTC 0.05%以上)は新型コロナウイルスに対して有効と判断。

ガム・デンタルリンス(CPC+BKC)、ポピドンヨード、リステリン(クールミント) はドイツの実験で

新型コロナウイルスに対して極めて有効と報告された。

・糖尿病と並んで歯周病も新型コロナウイルスによる肺炎のリスクを上げている

新型コロナウイルスは口腔で増殖するので出血している歯周組織から血液中に侵入する可能性がある

歯周組織から細菌や内毒素(LPS)が血液中に拡散することにはすでに強いエビデンスがある

・新型コロナウイルスは免疫細胞が狂乱状態に陥って過剰に反応してしまうこと

(サイトカインストーム)

そのために普通ならば感染細胞だけ倒す免疫系が健全細胞まで倒してしまう

→血管の病変に繋がり肺炎を起こす

・重症化予防 サイトカインストーム(免疫暴走)を防ぐ

新型コロナウイルス感染症はサイトカインストーム、すなわち免疫暴走により重症化する。本来なら

免疫細胞がウイルスと闘うために作るサイトカインですが、制御不可能となって自分の細胞まで攻撃

してしまう現象のこと。このサイトカインストームを引き起こす物質の多くは歯周病菌に由来すると

考えられている。歯周病菌は炎症性サイトカインの産生を増強し、肺炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)

などの重症化に影響することがある。

 

感想

専門的な口腔清掃を行うことの大切さは理解していましたが、必要な歯科治療を行い咀嚼ができる

ようにするということも感染予防に重要ということがわかりました。歯科受診を控えている方も

少なくないように感じますがコロナ対策の一つに口腔ケアがとても重要ということをお伝えして

いきたいのと、自分自身もセルフケアをより徹底していきたいと思います。

                               衛生士 藤元   

  2022/08/12   ふくだ歯科

「患者さんのやる気を引き出すセルフケア指導」について、勉強会で発表して

歯周病は、プロフェッショナルケアだけではコントロールし得ないものであり、歯周治療には患者さん

によるプラークコントロールが欠かせません。 プラークコントロールの成否は、患者さんの行動変容に

よって左右されます。したがって、口腔衛生指導(OHI)は術者が一方的に指導するのではなく、患者

さんの想いを聞いたり、患者さん自身に気づきをもたらしたりするというアプローチが欠かせません。

1. なぜ歯周治療に"患者さんの主体性"が必要なのか?

 ・プラークコントロールは術者だけでは達成できない 歯周病は、歯肉縁上のコントロールと歯肉縁下

  のコントロールの両方で初めて完成します。したがって、術者が主に縁下のコントロールを担当

  する代わりに、患者さんには縁上のコントロールを担当してもらう必要があります。

 ・患者さんに"お願いして"行動を変えてもらっても長続きしない

  生活習慣病は習慣の蓄積です。改善するためにはその習慣を変える必要があります。セルフケアで

  担うべき部分を「術者がやってあげる」というアプローチは最低のラインになります。そこで、

  患者さんの行動を変えるための介入が必要ですが、「〜してください」という、患者さんに"お願い

  する"指導だと、もしかすると目標設定が低くなって、妥協的になり、患者さんが良くなろうとする

  のを邪魔してしまうかもしれません。患者さんがセルフケアを行う目的が「自身のため」にならな

  ければ、「自分の健康を守る」という長期的なゆるぎない価値観は根付きません。そのためには、

  患者さんが問題を自分事化し(=主体性をもち)、受動的な姿勢からより能動的な姿勢になるように

  サポートすることが必要なのです。

 ・患者さんができることを奪えば、自立を損なう

  セルフケアで目指すのも患者さんの自立です。私たちはあくまでも患者さんを支える立場です。

  緑上のプラークコントロールは、患者さんができること、患者さんが活躍するステージという意味

  合いもあるのです。

2. "患者さんの主体性"を生み出すエッセンス

 ⑴お互いの「つもり」を共有する 歯科疾患を診ていくうえで、SPTの重要性について、歯科医療者の

  イメージと患者さんのイメージを一致させていくことが必要です。今現在、患者さんが歯科に対し

  てどのような価値観を持っているか、SPTの重要性を理解しているか確認することは、患者さんの

  主体性を育む最初の入口であるとともに、価値観の向上を要するのかどうかのスクリーニングにも

  なります。

 ⑵患者さんのいちばんの専門家は患者さん自身である

  プラークコントロールにおける基本は、"やってあげる"を過剰に増やさず、"患者さん自身ができる

  ことを増やす"です。患者さんが自分で考え行動することが、自分自身の問題として捉えられる

  もっとも効率のよい道程です。しかし、一般的には歯周組織検査を終えると、患者さん自身が考え

  る間を与えず、即座に術者が説明を始めたり、その解決方法やアドバイスを与えたりしてしまい

  がちです。一見患者さんのために良かれと思っての行為は、患者さん自身の口腔衛生習慣の結果

  が、口腔内の状態にどのように反映されているかを自分で結びつけるチャンスを奪ってしまうの

  です。まずは、患者さん自身による自己評価の機会を設け、チェアサイドにてセルフケアの取り

  組みに関して想起してもらい、患者さんがその評価を表明するための機会を準備することが何より

  も重要です。 患者さん自身による患者さんの評価も主体性を育むためには大切で、そのためには

  自身の取り組み(セルフケア)を点数化してもらうといいでしょう。実際に患者さんにやってもらう

  と、満点ではないことも多々あります。満点をつけないということは、減点となる理由について

  患者さんに思い当たることがあるということです。それに対して、術者が根掘り葉掘り聞いたり、

  解決策を言ったり、指摘してしまいがちですが、それでは患者さんの主体性を育む機会を摘み取っ

  てしまうでしょう。むしろ術者は今できていることに対して評価するとともに、減点されている

  部分をどう満点につなげるか患者さん自身に問題を抽出してもらい、解決法を模索してもらうよう

  導くことが重要です。また、"大きな行動変容"を促すためには"小さな成功体験"を積み重ねること

  が大切です。染め出しにおいても、"染め出された赤い部分を減らす"という発想ではなく、"染め

  出されない白い部分を増やす"という見方で考えれば、言葉がけ1つとってもおのずと変わります。

 ⑶患者さんの言葉を重視する

  日常の臨床のなかで患者さんのプラークコントロールの改善が難しかったり、できていたはずの

  セルフケアが急に悪化したりするのは、なぜでしょうか。この「なぜ?」を解決するには分析が

  必要で、そのためには患者さんが問題に対しどのように向き合っているのか、あるいは何を難しい

  と捉えているのかを理解する"声"の拾い上げが重要です。患者情報はSOAPIE形式で記録を行うと

  有効です。その際、主観的な情報(S)として患者さん自身の考え方(価値観)や発言を拾い、歯周治療

  に対する患者さんの認識(温度)を確認します。それにより、モチベーションと(ブラッシングの)

  テクニックのどちらに比重をおいて介入すべきかをその都度判断します。

Subjective:主観的情報

問題に対する患者自身の発言

Objective:客観的情報

術者が測定する患者の情報

Assessment:評価

Sの分析評価(何がその発言につながっているのか)、

Oの分析評価(何がその測定内容につながっているのか)

Planning:計画

問題解決のための介入を優先機序などから計画立案

Intervention:介入

実際の介入・治療内容

Evaluation:期待される結果

今後の見立て、期待されること、次回以降のチェック事項など

 

 

〈まとめ〉

歯周治療にはプロフェッショナルケアとセルフケアの両方が大切というのは理解していましたが、

どうしても日々のTBIなどではこちらから色々説明してしまう事が多く、患者さん自身に気づきを

もたらせるような説明は出来ていなかったかもしれないなと思いました。染め出しの例にもありました

が、今後は患者さんにも意見を聞いて、自分で改善点に気づいてもらえるようなTBIもしていきたいな

と思いました。

                          衛生士 星島

  2022/08/07   ふくだ歯科
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