スタッフレポート

2020年2月

「患者さんにピッタリな指導展開が即わかる!」について、勉強会で発表して

●患者さんの心理的抵抗を起させないようにするため「患者さんにしてはいけないこと」が3点ある。

 患者さんに心理的抵抗を起こす時と、その対策

 1. 望まないことを要求する  

   ・本人が望んでいることに協力する  

   ・「あなたの望みに添いたいと思う」と表明する   

  2. 急激で大きな変化を要求する  

   ・ゆっくり小さな変化から  

   ・優先順位をつけて、一つずつクリアしていく

 3. 選択肢を奪う  

   ・「自分で選んだ」と感じさせる  

   ・選択肢を増やす

 

●モチベーションで患者さんにすべきことは2つ!

 モチベーション:肯定的・具体的な願いを引き出す     

  「歯周病」は否定的なイメージを持っている患者さんが多い。「進行すれば歯が抜けてしまう」

  というような、脅迫的なイメージでは患者さんの意識は長続 きしない。

              ↓     

  「具体的にどうなったらいいか?」と患者さんの望みを、「おいしくご飯が食べ たい」など、

  明るく、目の前に情景が浮かぶような肯定的で具体的な望みと して聞き出す。そして、「ちゃんと

  治療すれば、○○になることができます」 というよに患者さんが言った言葉をそのまま用いる。

   このステップは患者さんの心理的抵抗を取り除き、協力を得る第1のステッ プになる。    

 エデュケーション:願いを叶えるために必要な知識を持ってもらう      

  「健康になりたい」という意識を持ってもらったら、次に必要なことはそれを達成する知識です。

  ➀病気の原因は、細菌でありプラーク(歯垢)        

   患者さんの中には、「食べかす」と「プラーク」を混同している方がいるの で注意が必要。            

  ②プラークコントロールの具体的な目標値        

   原因を取り除く方法は歯磨きで、その目標は磨き残しが20%以下であると説明する。

   【プラークコントロールの目標値はどう設定したらよい?           

    著者の医院では20%以下としていますが必ずしも20%以下にしなけ れば健康を維持できない

    というわけではない。具体的な目標がな いと患者さんが行動できないのでそれぞれの歯科医院

    の状況に合わ せて目標を決めておくとよい。もちろん、医院で一律ではなく、患 者さんの

    リスクに応じて細かく目標値を設定できればなおよい。】     

 上記の2点は、モチベーションの最後にもう一度確認する。確認の方法は、こちらから繰り返し言う

 のではなく、「歯周病の原因はなんでしたか」「健康を維持できる磨き残しは何%以下でしたか?」

 と尋ねる。また、この先の治療においても、来院のたびにこの2点を何度も確認する。

 

感想   

「健康を維持できる磨き残しは何%以下でしたか?」という質問は、歯磨きは「する」 前提で質問

しているそうです。質問の形式をとることで患者さんの無意識の領域に はたらきかけ、行動変容を

引き起こす、心理的に効果的な方法だそうです。 しかし、来院のたびに2点の最低限の知識を確認する

のは、意識を定着させるのに は有効だと思うが、しっかりと患者さんを理解していないと、逆効果に

なることが あるように思う。

                            衛生士 赤木

  2020/02/24   ふくだ歯科

「認知症の発症と歯周病」について、勉強会で発表して

日本人と歯周病

    外国人から日本人の口臭は臭いと思われている。口臭の主な原因は歯周病、歯周病が認知症に悪化

    する研究結果が出ている。 日本は口内ケア後進国。日本に住む外国人100人にアンケートし、日本人

    の口臭にガッカリした人は68人、口臭のせいで日本人とキスしたくない人は43人いた。口臭の原因は

    歯周病の可能性がある。

 

歯周病とは

    歯周病の原因は歯と歯茎の間に生息している細菌。症状は口臭と歯茎の腫れだが自覚症状が現れ

    にくい。歯周病の人は、60代が90%、30~50代は約80%、20代は70%。歯周病は世界で最も患者

    が多い感染症としてギネス認定されている。

 

アルツハイマー病と歯周病①

    アメリカのルイビル大学の研究チームが慢性歯周病の原因細菌がアルツハイマー病患者の脳で確認

    した。また同じチームがマウスに歯周病の原因細菌を感染させた実験を行ったところ、6週間後に

    脳内で歯周病の原因細菌を確認され、アミロイドβも著しく増加していた。アミロイドβとはアルツ

    ハイマー病を引き起こす物質である。 アミロイドβは脳内に蓄積すると、脳の炎症に関わる細胞が

    活性化されて脳内に炎症反応が生じ、結果として正常な神経細胞が破壊されて脳の萎縮が起こると

    されている。

 

アルツハイマー病と歯周病②

    アメリカの製薬会社コルテキシムの研究チームは慢性歯周病の原因細菌が作り出す毒素が96%の

    アルツハイマー病患者の脳で確認した。ジンジバリス菌がタウというタンパク質を分解し、沈殿を

    させていくという。タウタンパク質は中枢神経細胞(脳と脊髄)に多量に存在し、脳の神経ネット

    ワークを構築する神経軸索の機能に必須なタンパク質。タウタンパク質に異常が生じると細胞内で

    不溶性の凝集を作り、軸索輸送がうまくいかず、神経細胞の死を招くという。

    軸索輸送…神経細胞の長い突起である軸索の内部で行われている、活発な生体分子の輸送。軸索の

                      構造や機能の維持に

    必須の役割を持つ。

 

脳への通過と蓄積

    すべての物質は脳内に入る際に、血液脳関門と呼ばれる “関所”を通過しなくてはならない。これは、

     脳へ血液中の有害な物質が入らないようにして、大事な神経細胞を防御する機構である。このように

     脳に行く血管には防ぐ組織があるが、リンパ管は素通りしてしまうためリンパ管で行っていると

     見られているという。また、正常な人でも慢性歯周病の原因細菌によってつくられる毒素がアルツ

     ハイマー病患者の10分の1程度あるという 。 認知症は発症する20~30年前から脳内にアルツ

     ハイマー病の原因物質の蓄積が始まるという。アルツハイマー型認知症の高い発症率を示す年齢層

     は、70歳代である。そのため、認知症の発症予防のためには、遅くとも50歳代で歯周病がコント

     ロールされていなければならない。

 

認知症リスクのその他の要因

    高齢者において、残っている歯が少ないほど、記憶や学習能力に関わる海馬、意志や思考の機能を

    司る前頭葉とよばれる脳の一部の容積が小さくなることが分かっている。つまり、歯を失い物が噛め

    なくなると、脳への刺激が減少して脳の働きに影響が生じ、その結果として、アルツハイマー型

    認知症のリスクが増すということだ。 歯の数が少ないと認知症を発症しやすいというデータもある。

    2003年に愛知県の65歳以上の健常者を対象に、4年間にわたって認知症が発症するまでの日数を

    調べたものによると、歯がなくて入れ歯も使っていない人は歯が20本以上ある人と比べ1.9倍、

    あまり噛めない人はなんでも噛める人と比べ1.5倍、かかりつけの歯科医師がいない人はいる人に

    比べ1.4倍認知症になりやすいという結果が出ている。

 

歯周病による認知症以外の病気リスク

    その他にも歯周病は心筋梗塞・脳梗塞のリスクが2.8倍ある。歯周ポケットから歯周病菌や毒素が

    血管に行き、血管内で炎症を起こし、悪玉コレステロールが発生して血管が詰まる原因になる。肺に

    入ると誤嚥性肺炎、妊婦は早産などが2倍から3倍になるという。 細菌のコントロールはもちろん、

    機能面の改善も含めて、口のなかを良い状態に整えれば、認知症の発症を遅らせたり、予防にも

    つながる可能性がある。しっかり噛むこと、そして歯磨きなどの口の中のケアはとても大切である。

 

【感想・考察】

    歯周病が様々な病気に影響することは知っていたものの、今回のレポートで認知症との関係性に驚か

    されました。特に、歯周病による脳への影響や認知症のメカニズムを詳しく調べることができ、大変

    勉強になりました。だいぶ知られてきているとはいえ、中には「歯が悪くなったら入れ歯にして

    しまえばいい」などと安易に考えている人もおられます。その『歯』が悪くなる前の早めの予防が

    QOLの向上に不可欠なのだと感じました。

                            衛生士 河本

  2020/02/09   ふくだ歯科
タグ:認知症