スタッフレポート

2020年7月

令和元年度 歯科医療安全研修会 に参加して②

有病高齢者の安心安全な歯科医療を実現するためのリスクマネジメント

不整脈(心房細動)

① 頻脈性不整脈(速すぎるもの)

 例:心房細動、発作性上室性頻拍、心房粗動、心室頻拍、心室細動、洞性頻脈、心房性・

   心室性期外収縮など

② 徐脈性不整脈(遅すぎるもの)

 洞機能不全症候群、房室ブロック、徐脈性心房細動など

高齢者の歯科治療では、不整脈が発生しやすいですが、その重症度はピンキリです

無視して良いもの(ほとんど)〜

心臓突然死となるもの(極めてまれ)

 心房細動・・高齢者の代表的な不整脈、臨床的にも重要

不整脈患者のリスクマネジメント

(頻脈性)不整脈患者の局所麻酔薬は何を選択するべきなのか?

歯科用局所麻酔薬

アドレナリンはフェリプレシンよりも心拍数が上昇します

→頻脈性不整脈が発生しやすいことを示しています

アドレナリンにより不整脈は出現しやすくなるといえます

(歯科治療におけるエビデンスはありません)

アドレナリンには頻脈性不整脈(発作性心房細動など)のリスクがあります

不整脈に対する基本的なリスクマネジメント

・歯科治療に伴う疼痛、不安、緊張などを最小限にする

・頻脈性不整脈の既往のある患者では、アドレナリン含有局所麻酔薬は避けたほうがよい 

 しかし、十分な鎮痛効果を得る必要があるため、治療内容を考慮して選択する

・できれば心電図、少なくともパルオキシメトリ(波形が確認できるもの)、血圧測定可能なモニター

 装置を使用してモニタリングする

・致死的な不整脈(心室細動)に対して短時間でAEDを用意できる環境を整える

・BLS(救命救急)のライセンスを取得する

歯科治療中に不整脈が発生したら

・重篤な不整脈を見極める必要があるが、難易度が高い(心電図が必要)

・極端な頻脈(>120拍/分)や徐脈(<40拍/分)、脈の不整に伴い血圧低下、めまい、

 気分不良、呼吸困難感、意識消失などの症状が現れた場合は、重篤な不整脈の可能性を考える

・酸素投与とともに119番通報する

・もし心停止が認められたらAEDを手配し、救急隊到着まで一次救命救急(BLS)を行う

<感染予防>

スタンダード・プリコーション

すべての患者は未同定であり、感染の可能性のあるものとして取り扱い、針刺し事故の防止や血液暴露

に対する対策を講じようとする考え方であり、すべての患者の体液、排泄物、血液、病理組織、胎盤、

抜去歯は感染の可能性のあるものとして取り扱う

グローブをした手で書類その他を触らないようにしましょう!

グローブをポケットに入れないようにしましょう!

グローブに口で空気を入れないようにしましょう!

他の人に使わないようにしましょう!

 

<感想>

患者さんの小さな変化に気付き、対応できるように治療中の患者さんの表情などをしっかりと観察し

ながら診療に取り組みたいと思いました。 清潔・不潔をきちんと区別し、院内感染が起こらないように

器具も定期的にチェックして綺麗に保ちたいです。

                             衛生士 松本

  2020/07/16   ふくだ歯科

令和元年度 歯科医療安全研修会 に参加して①

有病高齢者の安心安全な歯科医療を実現するためのリスクマネジメント

九州歯科大学 リスクマネジメント歯科学分野教授 大渡凡人先生

◆人はだれでも年を取ります…我が国における高齢化率は進行中→56年間で急上昇

 ・人口高齢化(少子高齢化)は世界で進行している

  ・我が国の人口高齢化は(少子高齢化)は特に著しく、今後も世界一である

  ・我が国における人口高齢化の影響が大きい理由のひとつは、そのスピードが他の先進国に比例して

   非常に速いことである 

◆人口高齢化は歯科医療にとって何が問題なのか

  ・歯科医療従事者は「口から食べることを可能にして、患者さんの健康に貢献する」を目指している

   →高齢者は口腔疾患が複雑であるだけでなく、全身疾患をもつ高齢者が増えて、安全の確保が容易

    ではなくなってきたことにある

    例えば、在宅高齢者は重篤な全身疾患をもつ場合が多く、抜歯等でも安全確保が難しい

◆有病高齢者の歯科医療では何に注意すべきか…どの疾患,偶発症に優先的に対応すべき?

  →全身的偶発症として循環器疾患が多い

   …その中でも、①高血圧性危機 ②不整脈 に注意が必要である

◆歯科治療における死亡事故はどうなっているのか

  →局所麻酔関連が多いというデータがある

◆全身疾患を有する高齢者のリスクマネジメント

 安全な歯科治療とは…

  ステップ1:予防

   「病歴・薬剤」「医師からの情報(コンサルテーション)」「理学的検査」

        ↓

    「全身状態の評価」

        ↓

    「対策」…エビデンスに基づいたリスク低下の方法理論を考える

     →できるだけ正確な情報を得る

   ステップ2:早期発見(治療中のモニタリングなど)

    →できるだけ早く対応する

    ステップ3:対応(救急蘇生・薬剤・救急外来への搬送など)

     →専門の方にお願いする…患者を引き継ぐまでの橋渡しの役割を果たす

      必ずお薬手帳を見せてもらい、承諾を得てコピーを取る

     …口頭・自筆による薬剤情報は薬剤名の間違い、 不足など正確でないことが多い為

◆全身状態の把握と対応―まとめ―

 ◇リスクマネジメントで最も重要なのは予防である

  ◇正しい予防には全身状態の把握が必須である

  ◇そのためには正確な患者情報が必要である

 ◇患者情報としては病歴、薬剤情報、医師からの情報、理学検査などがある

  ◇我々は患者情報を正しく理解し、適切なマネジメントを組み立てることができる医学的な知識を

   持つ必要がある

◆高血圧 

 全身疾患を持つ高齢者の歯科治療における血圧変化

  …多くの場合、血圧は上昇する

   ex.抜歯を予定していた高齢者の患者さん

   →抜歯をする前に待合室で心筋梗塞を発症し、死亡した例もある

   …心配だけで血圧は上がってしまう

 高血圧により発症する全身疾患は重篤なものが多い  

  高血圧性腎症、高血圧性脳症、脳梗塞、くも膜下出血、

  脳内出血、心筋梗塞、大動脈解離、大動脈瘤破裂←死に至る可能性が著しく高い

◆治療中に血圧が上昇したら…

 ■疼痛治療を行う→局所麻酔の追加投与など…ある程度有効 

 ■深呼吸をしてもらう(ゆっくり)    …〃

 ■尿意を確かめる(特に男性高齢者)   …〃

 □(降圧剤投与・静脈内鎮静法)…低血圧リスクがある・経験が必要

◆高齢高血圧患者のリスクマネジメント

 ●高血圧性危機は脳幹出血や大動脈瘤破裂など致死的な病態を招きうる

 ●隠れた高血圧を見逃さない→すべての患者で血圧を測定する

 ●治療前・治療中の高血圧では≧180/120mmHgを避ける必要がある

  →モニタリングと血圧コントロールが必要

 ●異常な血圧上昇時は、治療をやめ、疼痛を抑制し、深呼吸をゆっくり行わせる

 (※降圧剤使用は低血圧のリスクがある)

 ●異常な血圧上昇に、胸痛(27%)、呼吸困難(22%)、

   神経脱落症状(片麻痺、意識障害など、21%)、を伴う場合は高血圧緊急症の可能性が高い

   …救急対応が可能な医療機関に連絡し、指示に従う

 

【感想・考察】

高血圧についてある程度知っているつもりでしたが、それがどんな影響を及ぼすかなど分かっていない

ことも多く、改めて知る良い機会となりました。来院される患者さんの中にも抜歯などで「ドキドキ

する」と治療を中断した方もいらっしゃいましたが、上手に声掛け出来ず悩むこともあった為、治療中

に血圧が上昇した時の対処法を知ることが出来て良かったです。心配だけでも血圧が上がってしまうと

のことですので、もちろん注意点や危険性は伝えるべきですが、感情面で負担になりすぎないように

配慮する必要性を感じました。また、患者さん本人だけでなくご家族にも、あまり消極的にとらえるの

ではなく積極的な見方が出来るよう、ご自宅にいるときから気にかけて下さるようにお知らせする必要

もあるのかなと思いました。

                                                                       衛生士 河本

  2020/07/01   ふくだ歯科