睡眠時無呼吸症候群とは
定義:「無呼吸・低呼吸指数」(AHI)が5以上かつ日中の過眠などの症候を伴うときを睡眠時無呼吸症候群とする定義が多い。
分類:閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS,ObstructiveSAS)
中枢性睡眠時無呼吸症候群
混合性睡眠時無呼吸症候群
原因:閉塞性睡眠時無呼吸症候群:
睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がり気道を閉塞することが主な原因
中枢性睡眠時無呼吸症候群:
脳血管障害・重症心不全などによる呼吸中枢の障害で呼吸運動が消失するのが原因
症状:就寝中の意識覚醒の短い反復、およびそれによる脳の不眠
昼間の耐えがたい眠気
抑うつ
大きな鼾など
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」は睡眠時ゆえに本人が気づかない隠れSASとなっているケース多く見られますがSASの重症度によっては深刻な病状に至る場合もあり、早期発見が一つの鍵のようです。現在ではその治療が歯科の保険診療として算定できるようになり、口腔内装置等による治療を実施している医院もあります。ではDHはSAS患者にどのように貢献できるでしょうか?歯だけでなく粘膜の診査や定期的なメインテナンスで口腔を見るDHがその予兆の第一発見者となる可能性が高いのです。
患者さんから睡眠について聞き出すポイント
睡眠時間:熟睡感も含めて聞く
SASがあると熟睡感はない、夜中に何度も目覚める、日中の眠気を感じる、
早朝には頭痛や頭重感がある。
寝ている姿勢:鼾のかき方が違う
高枕、手を上げて寝る。アルコール、睡眠薬の服用。
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問診事項は、具体例を出しながら少し掘り下げて聞く。
常に疑問を持ちながら患者さんに接することで、いろいろな発見につ
ながる。
SAS治療に対し歯科医療ができること
スプリント療法、マスク療法、外科的治療、薬物療法。
(日本の歯科では口腔内装置によるスプリント療法の適用が多い)
口腔内装置を装着することで唾液の循環が悪くなり、う蝕や歯周病のリスクが高まるので、徹底したブラッシングやSPTによる管理が重要。
SPT時にSASを発見するポイント
OSASは上気道の閉塞から起こりうる疾患 ⇒ 骨格の小さい方、下顎が後退している方、軟部組織が多い肥満の方は閉塞しやすい。
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SPT時の水平位のポジションでの開口は、下顎が後退し気道を狭窄させ
るため呼吸困難に陥りやすく、長時間の開口が困難となり水をためてい
られない。SPT時に何度も口を閉じたりするのは、隠れSASのサインと
なる。
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水平位:「あー」と発声してもらい、口蓋垂が見えるか確認する。
口蓋弓間の狭さ、舌骨の左右の高さの違いはないか確認する。
咬合位:呼吸と下顎を前方に出したときの呼吸のしやすさの違いを比較する。
パノラマX線写真:鼻中隔が湾曲していないか確認。
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口蓋垂が見えにくい、下顎を前方に出した方が呼吸しやすいと感じられ
る方は気道が狭く、SASが疑われる。
DHにとってSRP等の治療が困難になる、このような方いませんか?
*口腔内に水を貯められず、すぐに口を閉じてしまう
*下顎角下縁に触れると、苦しそうな表情になる
*口腔周囲筋や舌圧が強く、ミラーでの排除がしにくい
患者さんや患者さんの口腔内にこのような特徴はないですか?
*咬耗が激しい *骨隆起がある *舌が大きい
*顎が小さい *肥満体型 など
このような特徴があれば、隠れSASを疑い、患者さんのちょっとした反
応やようすから、「何かが他とは違うかも」と感じられるようアンテナ
を張ることが大切。
【感想】
最近、ニュースでもSASによる運転手の居眠り事故などを耳にすることが
あります。この病気は耳鼻咽喉科の領域で、発見は患者やその周りにいる人たちの気づきによることが多いと思っていました。しかし、歯科医師や歯科衛生士が口腔内の小さな変化に気づくことによって、隠れSASを見いだすことができ、患者さんの全身の健康に深く関わっていることを再認識しました。
衛生士 赤木悦子