〈苦情・クレームの対応〉
苦情、クレームが起こる原因として、医療者側と患者側での理解の食い違いなどがあげられ、患者さん
は期待と実際の治療内容・結果のギャップに不満を感じ、そこからクレームに発展する場合がある。
そのギャップを認識し対応、解決することが重要であるが、これらは患者さんへのインフォームドコン
セント(説明に対する理解と同意)が不十分であることが原因であり、クレームの防止、対応のためには
患者さんとのコミュニケーションが必要となる。しかし、ここまでではあくまでも単なるクレーム処理
にすぎず、重要なのはそのクレーム情報を収集、分析し改善することである。
1.患者さんとコミュニケーションを取る上でのポイント
・コミュニケーションの種類
コミュニケーションには話す言葉そのものの意味である言語的コミュニケーションと、表情、
見た目、仕草、表情、声の早さ、大きさなどの非言語的コミュニケーションがある。
⇒非言語的コミュニケーションは無意識に出てしまうためクレーム対応時には特に注意する
・心配りのある話し方を意識する
⇒・気持ちを和らげるひと言 ex)よろしければ、失礼ですが など
・相手の自己決定権を大事にした言葉 ex)~していただけますか?
・肯定的な言い方 ex)そちらでしないでください→こちらでお願いします
・医療従事者が優位であるかのように感じさせる表現を避ける
※病院は指示が多く「動かないで」などこのように言いがち
忙しくても、感謝の気持ちを入れた言葉を使うように心がけることが大切。
2.インフォームドコンセントにおけるポイント
・説明用語はわかりやすく
⇒勝手な解釈、思い込み、意味の取り違えの無いようわかりやすい言葉で
・積極的に確認を
⇒伝えただけで安心してはいけない。必ず『何が伝わったのか』を確かめる。院長の説明のあと、
DHからも確認を行うなどチームでフォローしあうとより良い。その際、「分かりましたか?」
のような上から目線の質問には「わかりません」とは言いづらいため、「何か気になることは
ありませんか?」のような患者さんに投げかける言葉で質問するのが好ましい。
※患者さんとの間に理解のズレが生じやすいことを肝に銘じ、常に確認を怠らないことが、苦情、
クレームさらには医療事故を防ぐ1番のポイントとなる。
3.クレームに発展させないために
・医療従事者の常識と患者さんの常識は同じではないということを理解する
・相手や自分の非言語的コミュニケーションに注意する
・接遇は自分の身を守る手段の1つである
⇒接遇とは快適な空間でおもてなしの心を表すこと。何か起きたときにまずは患者さんに不快な思い
をさせてしまったことに対して謝罪をすることで、クレームを防ぎ自分を守ることにも繋がる。
〈悪質クレームの対応〉
1. 悪質クレームの特徴
・要求内容と要求方法
(1) 法外、過大、でたらめ、無理難題な要求内容
(2) 暴力的、威圧的、妄執的、恐喝的言動による要求方法
・その他の行動態様
(1)1日に何度も電話をしてくる、連日電話をしてくる、電話を切らせない
(2)院内で大声や罵詈雑言、医師やスタッフに激昂、乱暴な言葉を投げつける
(3)身体的暴力をふるう など
これらの行動が見られる場合はクレームではなく悪質クレームである。
2.悪質クレームに対する基本姿勢
悪質クレーマーは、相手を怖がらせ優位に立とうとし短期戦に持ち込むことが多い
⇒持続性がなく、長期戦に弱い
そのため、「受け身」と「粘り腰」の対応が重要である。
・目的は撃退ではなくこの事態を乗り切ること
・過度な反応(驚いたりおびえる素振り)をしない
・相手と正対し、目線を合わせる
・同意も反論もせず相手をかわす
・相手の沈黙には更なる沈黙で応える
・態度が悪い、教育がなっていないなどの二次クレームを発生させない
など、相手の土俵に乗らないことが大切。
3.悪質クレーム・暴言・暴力には組織対応を
・スタッフ間で暴言、暴力の情報を共有し、再発防止に努める
・スタッフごとの回答、対応のバラつきの防止
・改善策、対応策を組織で検討する
・1人に対応を任せきりにせず、メンタル面のサポートを
1人でいる時にそのような事態が発生した場合は
・何も言わずにその場を離れない
・背を向けない
・時間をおく(落ち着かせる)
・1人でどうにかしない
【まとめ】
歯科衛生士は患者さんに近い存在なので、患者さんの不安、不満を少しでも減らせるように意識して
行動し ていくことが大切だと感じました。また、最近では悪質クレーマーによる事件も頻繁に起き
ています。傷害事件に発展しているケースもあるので、自分の身を守るためにも正しい対応を身に
つけておこうと思います。
衛生士 星島