岡山大学歯学部同窓会学術セミナー2016に参加して
歯周病…全身疾患の危険要因になりうる
→動脈硬化、認知症、糖尿病、弁膜症・心内膜炎、非アルコール性肝炎(NASH)、
低体重児出産・早産、関節リウマチ、誤嚥性肺炎
原因除去を中心とした歯周治療の展開が必要となってくる
歯周治療を行なうことによって口腔以外の指標(検査値)の改善にも寄与できる
問診票…身長・体重・血圧を記載する箇所があるとより確実→口と体は関係しているから
ライフステージと共に「口腔」と「全身」の関わりを意識する
ex.ある患者さん…口腔内の崩壊→一日三食うどん→食べる物が限定される
現在の状況 歯周治療介入無し(仮定) 歯周治療介入有り(実際)
肥満 肥満 肥満 メタボ 二型糖尿病 メタボ
咀嚼障害(うどんのみ) 糖尿病性合併症の発症 食生活の改善
発音障害(会話が苦手) 経済的困窮 社会性の回復
審美障害(面接が苦手) 社会復帰
歯周病治療を行なうなら患者さんの健康増進とQOLの向上に貢献できる
歯周病は糖尿病の六番目の合併症?
急性…糖尿病性昏睡
慢性…網膜症、腎症、神経障害、大血管障害、小血管障害
現行の糖尿病治療の主な目的は「合併症の発症・悪化の予防」である
しかし、歯周病はすでに発症しており悪影響を及ぼしている合併症なので、糖尿病と歯周病の
悪循環のサイクルを断ち切ることは糖尿病患者さんの健康寿命の延伸に寄与できる
HbA1c値が1%下がる意義とは?
歯周病治療はHbA1c値を平均0.4%低下させる
↓その中で…
HbA1c値は1%下がると、小血管系合併症のリスクが大幅に低減する
糖尿病患者における理想的な歯周病治療
軽微→歯周病悪化の予防
重度→歯周病のコントロール・口腔機能の改善
歯周組織再生治療の変遷と将来 ~塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の臨床応用に関する最新情報~
健康長寿と再生医療
一般的に健康であると認識する指標は「食事を食べることができる」であるが、 健康寿命を損なう
ことに挙げられるのは、一位が癌など、歯科関連は入っていない
歯周組織再生治療の歴史
・骨移植術…自家骨・他家骨・異種他家骨・人口材料
・長い上皮性付着で治癒することが多いと報告されている
・GTR法やEMD、PRPと併用することもある
・歯周組織再生誘導法(GTR法)
・PRP(多血小板血漿)、PRF・CGF(多血小板フィブリン)
・止血・創傷治癒促進・成長因子の役割
・再生医療等安全性確保法の制定…PRP、PRF・CGF使用時の手続きと規制
・エナメルマトリックスタンパクを応用した再生治療
EMD(エナメルマトリックスデリバティブ)
・エムドゲインゲル(ブタ歯胚組織使用歯周組織再生用材料)
・エムドゲインの安全性について
・異種生物タンパクに対するアレルギー、ウィルスや伝達性病原体の混入
・感染性の観点から エムドゲイン→エムドゲインゲルへ(加熱製剤になった)
しかし、リスクをすべて説明することは難しい
・塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)
・bFGFは体内の組織かに広く分布し、主に組織が損傷を受けた時、細胞外基質から遊離され、
組織の修復再生因子として活躍するもの→歯周病治療薬への応用に期待
歯周組織再生治療のまとめ
・健康寿命の延伸の為に、健康な歯を保存することに力を注ぐ事が重要
・EMDは現在国内で承認されている歯周治療材料の中で最も高い有効性を示す
・bFGFは異種タンパクを含まない歯周治療薬でありEMDよりも高い有効性を示す可能性がある
【感想・考察】
今回、岡大セミナーの内容をレポートしていく中で、やはり健康と口腔とは大きく関連しており、
医学的にも、そして一般的に患者さんが求めている事においても歯周病治療は重要な位置と割合を
占めているように感じました。私たちが行なっている事は全身にも影響を及ぼすのだということを
心に留め、ただ漫然と日々の診療をこなすのではなく、高いモチベーションを保ちつつ患者さんに
向き合っていけたらいいなと思いました。
衛生士 河本