「なぜ、ここだけ歯周炎が進行したか?局所的な骨吸収の背景にある力の影響」について、勉強会で発表して
力がかかわる口腔内のトラブル
メインテナンス期間に歯を失う原因の1位は、歯の破折。原因は力。
DHは、細菌のコントロールとともに「口腔内に生じる力」を捉える知識と技術が必要。
代表的な現症
・歯冠破折
・咬合面、切端の咬耗、金属の皺・補綴装置の破折
・歯頚部の楔状欠損
・フェストゥーン、クレフト
・マイクロクラックによるう蝕
・骨吸収(CASE1~3)
CASE1.最後臼歯近心の垂直性骨吸収
歯根膜組織で炎症性サイトカインが生産される影響で、歯根膜腔が拡がる。炎症性サイトカインの
生産に至る原因は、「細菌感染」と「力学的負荷(矯正力、ブラキシズム、咬合性外傷)」。咬合調整が
必要なときがある。
CASE2.欠損歯があり、他の歯に負担がかかる
過度の加重負担のため骨吸収が進行。
隣在歯や対合歯との関係をよく観察して、広い視野と細かい観察眼を持つようにする。
根分岐部だけで骨吸収が進行することもある。(臼歯に過度な力がかかり続けると、歯をねじるよう
な力が加わると考えられ、根分岐部に応力がかかり、同一の歯でも近遠心より歯槽骨の吸収が進行
する場合がある。)
CASE3.上顎小臼歯の骨吸収
犬歯は、ギリギリと水平的に動かす側方運動を受け止めている(それを受け止める骨量を有して
いる)が、八重歯の方や、年月を重ねて飛び出た犬歯がこすれて上下の歯が近づいている方など、
犬歯による下顎側方運動時の誘導ができない場合、隣在歯がその役目を担うことになる。犬歯の
代わりに側方運動を受け止める上顎小臼歯は、歯根が短く力の影響を受けやすい。
部位による現症の違い
歯周炎が起きている部位に外傷性咬合が加わると、歯根膜腔が拡大し、血管透過性の増加、破骨
細胞の活性化によって骨吸収が起きると考えられる。その結果、骨が薄い部位は歯根が露出し、
骨が厚い部位は垂直性骨欠損になる。
歯周病や咬合性外傷は長期的なもので、どちらが先に発症したのかわからないことも多い。
歯の動揺が増加している場合や、動揺により患者さんの機能障害がある場合は、歯科医師の診断を
共有することが必要。
感想
最近の診療では、歯や顎に加わる力の影響により、痛みや炎症、動揺を確認することが多くなったよう
に感じる。力と炎症の両方をコントロールし、今ある歯を快適に長く使って頂けるように、衛生指導、
SRPを行っていきたい。
衛生士 岡本