第4章 医療人としての言葉づかい 7の法則
一般人の理解度に意識を向けてみよう
一般に、歯科の言葉に限らず、医療の言葉は専門外の人には大変難しく感じられている。
患者が自らの責任で医療を選択するには、そのような言葉が表す内容を理解することが肝要。
そして医療者は患者がよく理解できるように、分かりにくい言葉を分かりやすくする工夫を行う義務がある。
伝えるための努力は必ず伝わるもの
「病院の言葉が伝わらない」原因と解決策
①、患者に言葉が知られていない→日常語に言い換える
②、患者の理解が不確か→明確に説明する
③、患者に心理的負担がある→心理的負担を軽減する言葉づかいを工夫する
難しいことを分かりやすく伝えるのには、大変な努力が必要。
→しかし、難しいことを分かりやすく伝えようとする院内全体での姿勢や努力は、患者さんに伝わるもの。
カタカナ語をなるべく使わないようにしよう
医療の専門用語は難しい上に、一般的に使われているカタカナ語も、高齢の患者さんにはわかりにくい。
患者さんによっては日本語で表現した方が無難、あるいは言い換えた方が良いと思われるもの
ex. メインテナンス…整備・維持・保守・点検・手入れ
リスク…危険・何かを実行する際に伴う危険や失敗の可能性
モチベーション…動機・物事に取り組む意欲を内側から高める働きかけ
スキル…手腕・技量・訓練によって得られる特殊な技能や技術
コンセプト…基本概念・事業や開発をすすめる際の基本となる考え方
シミュレーション…模擬実験・計算や模擬装置などで起こり得る状況をさまざまに想定して行う実験。
etc.…
遠慮がちな患者さんは、その単語の意味がわからなくても、先生への遠慮や気兼ねから、質問しない、質問
できない傾向にある。また、一度分からない単語が出てくると、聞こうとする意欲や理解しようとする意欲が
減退してしまうということも考えられる。
「使いやすい言葉」や「使いたい言葉」を使うのではなく、患者さんに「伝わる言葉」や患者さんが「理解しやすい
言葉」を意識して使うことが必要となってくる。トラブル防止のためにも、常に相手意識、相手の理解度を想像
して、用語を選ぶことは重要である。
守秘義務の指導を徹底しよう
医療従事者には守秘義務が法で定められており、友人や家族にも、患者さんのことを話すべきではない。
仮に、その情報の発信者が歯科医院のスタッフであるならば、個人の信用のみならず、自分の勤務する
歯科医院全体、ひいては院長先生の信用までなくし、結果的には刑法で罰せられることさえある。
白衣で外出する際はとくに話題に注意しよう
白衣のままの外出=「私は○○歯科医院に勤務しています」という看板を前後に付けて歩いているということ。
見られている、聞かれているという意識を常に持ち、誰に聞かれても困らない、恥ずかしくない会話、品の良い
会話を心がけるべき。それが、自分と歯科医院、そして患者さんを守ることにもなる。
ツイッターに書き込まれる覚悟で発言しよう
ツイッターは、簡単に多数の人に情報発信ができる為、利用者が増加しており、当然、患者さんの中にも利用者
はおられることだろう。ツイッターを意識しすぎて、ビクビクする必要はないものの、書き込まれることを想定して、
言葉を使い、発言の中身も慎重に吟味できる。
患者さんとの信頼関係構築の為に…誠意が伝わるように、言葉遣いにも関心を持ち、言葉や表現を吟味して
いく。
エビデンスのある話をするよう院内で確認しあう
エビデンス=「科学的根拠・証拠」
さまざまな情報が氾濫している為、その信憑性を個人が判断しなければならなくなり、正確で確実な情報源や
説明を求める人が増えている。
↓
患者さん説明時…◇主観的な評価は避け、エビデンスのある話、情報源がはっきり
している話を選び、自信を持って説明する。
◇内容により、「一般に~と考えられる」「個人的には~と思われる」「ここからは個人
的な意見ですが…」など、言葉を補って説明できる。
「確率」はとらえ方が人それぞれ
…数字を示せるデータがあり、伝えた方が良い場合には数字を正確に提示できるが、その受け止め方
は人それぞれである為、患者さんの反応をよく観察する必要がある。正しく伝わっていないと感じたら、
表現を変える必要があります。
ex. ある外科医師は…
「『再発は5%の確率です』と説明したところ、患者さんは心から安心したという顔を
しました。その顔を見て私は焦りました。20人に1人は再発するということが分かって
いないのだと感じました。」 と述べている。
【感想・考察】
歯科衛生士になりたての頃は、まだ一般人意識を持っていたものの、段々と慣れてくるにつれ、すっかり
忘れてしまい、どこかに置いてきてしまったように感じることがあります。だからこそ、患者さんと同じ目線に
立つためには、大変な努力と感情移入が必要になってくるのだと、この章を読み、改めて痛感しました。
本文中に『「使いやすい言葉」や「使いたい言葉」を使うのではなく、患者さんに「伝わる言葉」や患者さんが
「理解しやすい言葉」を意識して使うことが必要となってくる。』とありました。普段、何気なく使っている
メインテナンスやリスクといったカタカナ語から専門用語まで私たちが使う言葉は幅広いですが、さまざまな
年齢層の患者さん一人一人に合わせ、よく言葉を選択していかなければならないと感じました。そして、会話や
TBIの中で患者さんに置いてきぼりの気分を味わわせることのないよう、よりいっそうの配慮を示していきたいと
思いました。
衛生士 河本