スタッフレポート

虫歯予防

う蝕予防のセルフケアについて、勉強会で発表して

① セルフケアの目的

<発酵性糖質とプラークを除去し、ディスバイオーシスを防ぐ>

う蝕・・口腔細菌叢のバランスの変化(ディスバイオーシス)によって引き起こされる疾患

    ディスバイオーシス:発酵性糖質の頻繁な摂取や唾液量の減少などにより酸性に弱い善玉菌の

              数が減少し酸に強い悪玉菌が大多数を占める状態

セルフケアの第一の目的・・毎日のブラッシングで悪玉菌のエサになる発酵性糖質を除去すると

             ともに、悪玉菌が増えかけたプラークを除去し、善玉菌主体の菌叢に戻す

<再石灰化を促進させる>

脱灰と再石灰化のバランスの乱れ→初期う蝕からう窩形成への進行

カルシウムイオン、リン酸イオン、フッ化物イオン→エナメル質の再石灰化を進める

② フッ化物+αで再石灰化をさらに促進する

<フッ化物の特徴、使用法>

◎モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)

特徴

・エナメル質表面のカルシウムとの反応が遅いので、脱灰部深くに浸透(すすぎ過ぎ厳禁)

・初期う蝕の再石灰化にピッタリ

使用法

歯磨剤で用いる(500~1450ppm)

◎フッ化ナトリウム(NaF)

特徴

・カルシウムとの親和性が高い。

 エナメル質表面のカルシウムと素早く反応してフッ化カルシウム(CaF2)となる

使用法

・歯面塗布で用いる(9000ppm)歯科医院で使用

・歯磨剤で用いる(500~1450ppm)毎日家庭で使用することで、高濃度フッ素減少を補う

・洗口剤で用いる(毎日法:225~250ppm,週1回法:900ppm)

プロフェッショナルケアとセルフケアの双方でフッ化物を使うことによって、短期的な効果の両方が

カバーされ、万全の体制になる

③ 口腔内のpHをコントロールする

<唾液分泌低下によって失われた緩衝作用を補う>

唾液は多くの生理作用がありその分泌量が低下すると、洗浄作用、抗菌作用、緩衝作用が失われる

ため、う蝕のリスクも亢進する。高齢の方や唾液分泌障害の方においては、低下した緩衝作用を補完

する目的で口腔内pH中和剤(ピュリフレッシュ(ヨシダ)、カリフリースプレー(サントークコー

ポレーション)など)を食後に使用すると有効。

④ 咀嚼刺激によって唾液分泌を促進する

う蝕予防に言及した表示内容が認められている特保ガム

◎ポスカ  江崎グリコ(株)

成分・・リン酸化オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)

    →水や唾液に溶けないカルシウムが非常に溶けやすい状態になっている

     カルシウムが通り抜けることができない初期う蝕の表層を通り抜けて、脱灰部位まで浸透し

     再石灰化に利用される

1日摂取目安量・・1回に2粒を20分噛み、1日3回を目安

◎キシリトールガム  (株)ロッテ

成分・・キシリトール、マルチトール、リン酸水素カルシウム、フクロノリ油出物(フノラン)

    キシリトール→細菌によって代謝され、酸がつくられる基質とはならない甘味料

1日摂取目安量・・1回に2粒を5分噛み、1日7回を目安

◎リカルデント  モンテリーズ・ジャパン(株)

成分・・CCP-ACP(Caとして)

    →カゼインホスホペプチド(CPP)が非晶質のリン酸カルシウム(ACP)の周りを取り囲む

     構造をした複合体。

     再石灰化に必要なリン酸イオンとカルシウムイオンを歯の表層に供給

    ※牛乳由来成分の為、牛乳や乳製品にアレルギーのある方は利用しない

1日摂取目安量・・2粒を同時に1日4回、1回あたり20分間を目安

感想

フッ化物の特徴や唾液の作用などについて再確認できました。むし歯のリスクの高い方にはフッ素塗布

をしていますが、合わせて毎日のブラッシングの大切さやキシリトールなどについてもお話ができれば

いいなと思いました。

                             衛生士 沼本

  2023/12/29   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

高齢者の根面う蝕について、勉強会で発表して

*歯冠う蝕と根面う蝕の違い

 歯冠部はエナメル質と呼ばれる酸に溶けにくい硬い組織で覆われて守られていますが、 歯根部は

 エナメル質に覆われていません。そのため、酸に溶けやすく、虫歯になりやすいだけでなく、虫歯の

 進行も早いのです。

 象牙質が虫歯になりやすい原因は…

 ① 象牙質は臨界phが高く、酸に溶けやすいから

  エナメル質はph5.5より低くなると溶け始めます。一方、象牙質の臨界ph6.0~6.7程度でエナメル質

  よりも酸に溶けやすい性質があります。

 ② 象牙質は有機質が多いから

  エナメル質は約95%が無機質で、有機質は1%程度であるのに対して、象牙質は無機質が約70%、

  有機質が約20%で構成されています。そのため、象牙質はエナメル質に比べて軟らかいのです。

  無機質が溶けて、残った有機質の隙間に細菌が侵入してたまることで、虫歯の進行の原因に

  なります。

 ③ 表面に象牙細管が開いているから

  象牙質の表面には、象牙細管があります。そのため、象牙質では、象牙細管を通じて象牙質内部に

  最近が侵入したり、酸が入り込んできます。根面う蝕の進行が速いのは、象牙細管の存在が大きく

  かかわっていきます。

 

*高齢になるとなぜ根面う蝕になりやすいのか

 お年を重ねると、何らかの薬を服用されている方も徐々に増えていきます。薬のせいだけではあり

 ませんが、唾液の出が少なくなる副作用がある薬も多く、ご高齢になるとお口が乾く方多くいらっ

 しゃいます。 唾液には、虫歯から歯を守る作用があります。そのため、口が乾き、唾液が少なくなる

 と、歯根部に虫歯が多発したり、急激に進行することがあるので、注意が必要なのです。

 ① う蝕から歯を守る唾液が減少するから

  唾液は、虫歯菌によって作られた酸を中和して歯を酸から守る(緩衝作用)だけでなく、酸に

  よって溶けて歯を元に戻す(再石灰化)力があり、この2つの力で虫歯から歯を守っています。

  お年を重ねると自然と唾液の出が少なくなったり、薬剤の副作用で唾液減少が起こることが多く

  あります。歯を守ってくれていた唾液が減ってしまうことで、これまで以上のケアが必要に

  なります。

 ② 口腔内の水分保持が難しくなることも

  お口の周りの筋力が低下することで、お口の中全体に唾液が行き渡らなくなったり、唇を結び

  づらいためにお口に中の水分が蒸発しやすくなることでも口腔乾燥が助長されます。 そのような

  場合は口腔周囲筋の筋訓練をするといいでしょう。

 

*根面う蝕のリスクファクター

 歯根部の虫歯は歯についたプラークが原因です。プラークが残っていたり、砂糖を含む食品を何度も

 摂取することで、虫歯になりやすくなります。また、唾液の量が少なくなればさらになりやすく

 なります。

 ① 歯周病によって歯肉が退縮することが一番のリスク

  歯周病などで歯茎が下がって歯の根元が露出してしまうと、歯茎で覆われていた象牙質が酸に

  さらされ、歯を溶かして、歯の根元の虫歯ができてしまいます。

 

*根面う蝕予防のためのセルフケア

 ①フッ化物配合の歯磨剤を使用する フッ素入りの歯磨剤を使って、力を入れすぎないように、丁寧に

  ブラッシングすることが重要です。ブラッシング後のすすぎは、できるだけフッ素が多く歯に

  留まるように、1~2回程度に少なめにするといいでしょう。また、虫歯になりやすい方は、

  ブラッシングに加えて、フッ素を含む洗口液を用いると予防の効果があります。

 ② 隙間ができた歯の間の清掃には歯間ブラシを 根元の部分に関して、歯と歯の間では、デンタル

  フロスよりも歯間ブラシのほうが効果的です。歯間ブラシはサイズの合ったものにフッ素入りの

  歯磨剤をつけて使用するといいでしょう。

 

感想

根面う蝕にはプラークも関係しているが、唾液の量も深く関係していることがわかりました。高齢に

なると唾液の量は少なくなっていきますが、服用している薬の副作用によっても唾液が減少してしまう

ので、服用している薬を把握したうえでTBIなどに繋げていくことが大切だと思いました。

またこれから暑くなり水分補給がたいせつな季節になるので、熱中症予防とからめて水分補給を

しっかりしてもらうことで口腔乾燥予防から根面う蝕の話を伝えていけたらいいなと思いました。

                        衛生士 岡崎

  2021/11/14   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

「バイオフィルムを管理する予防歯科」について、勉強会で発表して

う蝕の最新病因論

⒈ う蝕原性菌

     ミュータンスレンサ球菌は間違いなく最強のう蝕源性菌であるが、21世紀になって、ミュータンス

     レンサ球菌以外の酸産生菌も、う蝕発症に関わっていることが明らかになった。

     <20世紀の常識>

     う蝕原性菌

     ・ミュータンスレンサ球菌

     ・ラクトバチラス

      う蝕誘発性糖質

     ・砂糖(ショ糖)

     <21世紀の常識>

      う蝕原性菌

      ・ミュータンスレンサ球菌

      ・ラクトバチラス

      ・ビフィズス菌

      ・Scardovia wiggsiae 種

      ・Actinomyces 種

      ・Veillonella 種

       う蝕誘発性糖質

       ・発酵性糖質  

           ショ糖、ブドウ糖、果糖、調理デンプン

        砂糖(ショ糖)はミュータンスレンサ球菌が不溶性グルカンを作るために必要であるため、う蝕

        予防の食事指導は「甘い物を避けなさい」であったのである。しかし、新たにう蝕原性菌に加え

        られた細菌種は不溶性グルカンは作らず、歯面に付着したバイオフィルムの中で酸を産生する

        ため、ショ糖が制限されても影響は少ない。

 

⒉ う蝕原性バイオフィルムのMicrobial shift

     う蝕原性菌はショ糖だけではなく、他の発酵性糖質(ブドウ糖、果糖、調理デンプン)を摂取して

     乳酸などの有機酸を産生し、歯を溶かす。ショ糖が制限されても、その他の糖質摂取によって、

     バイオフィルムのpHは酸性に傾く。そして酸性環境を好む菌種が増殖しMicrobial shift が起こり、

     う蝕原性の高いバイオフィルムへと変化してしまうのである。

   「甘い物を避けなさい」の食事指導は変わらなければいけない。調理デンプンもMicrobial shift の要因

     となるため、麺類や粉物にも注意が必要。

 

⒊ う蝕の治療

    21世紀になって、う蝕という疾患は「脱灰と石灰化のバランスが偏っている状態であり、う蝕=

    う窩ではない」という考えが浸透した。脱灰因子と防御因子(脱灰を防ぎ石灰化を促進する因子)の

    間のバランス崩壊が、う蝕の発生原因である。 このバランス崩壊はバイオフィルムの周囲環境(特に

    栄養環境)の変化によるMicrobial shift が原因である。

    疾患の治療は病因除去である。う蝕の原因はMicrobial shift であるため、高病原化したバイオ

    フィルムを低病原性に戻すことがう蝕の治療である。つまり、脱灰因子を減らし、防御因子を増やす

    ことであり、削って詰めることではない。 改善すべき脱灰因子は、食事内容・回数(バイオフィルム

    栄養環境)とう蝕原性菌量(バイオフィルムの量)である。また、含嗽剤や唾液分泌刺激などにより

    バイオフィルムのpHを中和に向かわせる工夫も必要である。防御因子の強化には、フッ化物による

    歯質強化、クロルヘキシジンによる殺菌、フィッシャーシーラント処置、生活習慣指導、あるいは

    早期治療などの対応が有効である。

    Microbial shift

    バイオフィルムを取り巻く栄養、温度、嫌気度、pHなどの環境変化によって、細菌達にとって好ま

    しい生育環境がもたらされることにより起こる常在菌。Microbial shiftによりバイオフィルムと歯・

    歯周組織の間の均衡が崩れ、う蝕や歯周病が発症・進行する。

 

感想

    う蝕の予防には脱灰と石灰化のバランスが大切なことが分かりました。防御因子の強化ではフッ素

    塗布をよく行っていますが、患者さんの中にはフッ素を塗っていれば大丈夫と思っている方もいる

    かもしれないのでフッ素の効果に加えて普段の生活習慣、食事習慣についても少し触れていけたら

    と思いました。

                                     衛生士 松本

  2019/12/31   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

岡山大学歯学部同窓会セミナー2019に参加して

1.歯周病の長期継続管理と生涯に渡るむし歯予防

  日本人が歯を失う原因の第1位は歯周病、第2位はう蝕であるとされています。う蝕はフッ化物を公衆

 衛生的に応用することによってかなりの予防効果が期待できます。しかし、歯周病に対しては一対一

 の対応でなければ効果を挙げることは困難です。歯科医院に来院している患者さんは主訴の多くは

 歯牙に関するものですが、その8-9割は歯周病に罹患していると言われています。来院された患者

 さんの30年後、50年後の口腔内を考えて歯周病を見逃さずに対応することにより、長期にわたって

 より良い口腔内を保つことができます。

2.歯周病の治療や長期継続管理を行っていく上での術者磨きの目的

・爽快感による動機づけ・・・self care(自分でもやってみよう)

              professional care(また受診しよう)

・治癒効果・・・徹底的なプラーク除去、歯肉のマッサージ

・コミュニケーション

3.モチベーションを上げるためには

  楽しい、気持ちいい、健康になれるなどのポジティブなモチベーションの方が継続に効果があり

 ます。そのためには1日何回、何分磨いてくださいという指導はあまり行いません。

 説明では忘れてしまうので感覚で覚えてもらうと良いでしょう。

4.予防歯科

《むし歯予防と歯周病予防の違い》

•むし歯予防・・・1.フッ化物の利用(洗口・歯磨剤)

         2.糖分の摂取制限(回数・時間帯)

         3.規則正しい食生活

•歯周病予防・・・1.適切なブラッシング(歯垢の除去・歯肉のマッサージ)

         2.professional Tooth Cleaning

                         3.適切な食生活

                         4.喫煙を避ける

 

 まとめ

 今回の講演の中で、治療の為だけでなく痛くない時にも通える歯科医院を目指すというお話があり

 ました。TBIなどで患者さんと接する際にどうしても「ここが出来ていない」「ここが悪くなっている」

 などとネガティブな指導をしてしまいがちですが、予防を目的に自主的に歯科に来院してもらうため

 に、「気持ちいいから」、「健康になれるから」というポジティブなモチベーションを持っていただける

 ように意識しながら接していけたらと思いました。

                             衛生士  星島

  2019/10/09   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

「機能する細菌(歯肉縁上)」について、勉強会で発表して

最近の研究によって“病原菌”単独の働きによるものではなく、口腔常在菌の“協力(チームワーク)”によ

って、う蝕や歯周病が引き起こされることが分かってきました。プラークをお口の中の生態系と捉え、

細菌たちの“チームワーク”でう蝕や歯周病が起こるメカニズムを解説します。(生態学的プラーク説)

 

① プラーク中はどんな環境?

  歯肉縁上は常に唾液で覆われ、酸素も浸透しやすい環境です。食事の時には、糖などの栄養素が多量

 に供給されます。特に糖は細菌の栄養源として優れており、歯肉縁上には糖を利用してエネルギーを

 得て生きている多くの通性嫌気性細菌が生息しています。

② う蝕を引き起こすまで

  細菌たちが代謝すると環境に変化が起きる 

 歯肉縁上プラークにStreptococcusやAccinomycesといった細菌はすべて糖を代謝し酸を産生します。

 また、細菌の代謝にともなって環境中の酸素が消費されてしまうので、プラーク中は嫌気的になり

 やすくなります。

  頻繁に糖が摂取されるorブラッシングが行われないと、疾患が発症する

  糖を頻繁に摂取すると歯肉縁上プラークPHの回復が遅れ、PHの低い状態が続くようになります。

 これによって歯表面の脱灰も起きやすくなりますが、同時に細菌の酸生産機能を増強させることに

 なります。ただし、細菌が自ら創り出した酸性環境が細菌にとっても好ましい環境ではありません。

 酸性環境では重要な代謝酵素や遺伝子が変性し、死(酸性死)に至ることになるため、細菌は様々な

 対抗策を打ち出します。その結果、細菌たちは自ら創り出した酸性環境で生き延びることができると

 ともに、糖から酸を産生する機能が増強し、う蝕誘発能が高まることになります。このように酸性

 環境に応じて酸生産能の増強することを「酸適応」といい、酸適応によって酸生産能が増強すると、

 やがて脱灰が再石灰化を上回り、初期う蝕病巣が生じると考えられます。

  変化した環境で生き残る細菌が疾患を進行する

  一度う蝕病巣が確立すると、酸性環境はより持続するようになります。酸適応には限度があり、

 やがて酸性環境に弱い細菌から順番に、増強が阻害され、代謝が阻害され、酸性死に至ります。

 その結果、厳しい酸性環境でも増強し酸を産生し続ける細菌が生き残ることになります。酸性環境に

 耐える性質のことを「耐酸性能」といい、酸性環境が細菌の耐酸性能を応じて細菌を選択することを

 「酸選択」といいます。耐酸性能が高く、酸選択で生き残る代表的な細菌がMS菌やLactobacillas

 (乳酸桿菌)です。

  う蝕は多くの細菌が機能した結果

 う蝕は歯肉縁上という環境における細菌たちみんなの機能によって生ずること、すなわち、細菌の

 機能が環境を変え、それに細菌が適応する(酸適応)とともに環境をさらに変え、やがて環境によって

 生息できる細菌が選択される(酸選択)ことでう蝕が進行します。このう蝕プロセスでは、歯肉縁上

 プラークに生息するどの酸性生菌であってもう蝕発症に関わると考えられ、言い換えると、細菌の

 種類ではなく、細菌の機能が重要であることが分かります。

 

〈まとめ〉

  う蝕を初期段階で食い止める方法の一つとしてプラーク内の酸性環境が持続しないようにすることが

 大切です。1日に数回の食事で一時的に酸性環境になることは避けられませんが、間食の食べ方や

 ブラッシングに注意し、適切にフッ化物を用いることで、う蝕の予防は可能です。

                               衛生士  関口

  2018/10/24   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

「なんとしても守りたい6歳臼歯」について、勉強会で発表して

 

~萌出前からの継続した管理で6歳臼歯を守ろう!~

 

《萌出前の管理と指導》

保護者・子どもへの情報提供がもっとも重要!

☆この時期に考慮したいこと☆

①生えてきたことに保護者が気づきにくい。そのため、萌出直後の6歳臼歯の適切なケアがされない

②保護者が6歳臼歯を乳歯と勘違いしてしまうことが多い。そのため、萌出直後の6歳臼歯が「はじめて生える大切な永久歯である」との認識が欠け、適切な準備ができない

 

☆歯科衛生士業務のかんどころ☆

①萌出時期を推測する

6歳前後になると乳臼歯の後方の歯槽堤が膨らんできます。
それが萌出のサインですので、5歳を過ぎたら第二乳臼歯後方の歯槽堤を注意深く観察し、

萌出時期を推測します。(図1)

また、同じ時期には下顎前歯がぐらぐらして抜ける、上顎前歯に隙間(発育空隙)などの影響が出てきます。このような変化も観察します。

②う蝕予防についての健康教育

保護者の理解・強力が不可欠であるため、保護者(一番に母親)の予防に対する関心をもってもらうような教育をします。

 

《萌出開始時期の管理と指導》

特にう蝕になりやすいことを考慮したケアを!

☆この時期に考慮したいこと☆

①萌出時は歯肉弁に覆われているため、うまく咬合面を磨けない

②萌出したての歯は、石灰化が未熟で軟らかいため、脱灰しやすい

③まれに萌出の段階で形成不全を起こしている歯がある(エナメル質形成不全、減形成)

④咬合面溝が、乳歯よりも複雑かつ深いためプラークが溜まりやすい

⑤乳歯列より約1cm後方に位置し、そこまで歯ブラシを入れることは、子どもにとって難しい

 

☆歯科衛生士業務のかんどころ☆

①萌出直後の6歳臼歯の問題を見逃さない

萌出してきた6歳臼歯の状態をよく確認します。歯冠部エナメル質に形成不全や象牙質深部う蝕が発見された場合、早期に対応が必要となります。完全萌出時には歯髄まで達するう蝕に進行してしまう危険があるため、短い間隔での観察をします。

②予防の計画を立てる

③困難な部位へのケアのサポート

歯肉弁の覆われた状態では、ホームケアではプラークを完全に落とせてないことがあります。(図2)

歯肉弁に覆われた部分や咬合面溝などケアができてない部位のプラークを、プロフェッショナルケアで除去します。

④変化する口腔内の状態を記録に残す

 

萌出以降の管理と指導

近心面・遠心面のう蝕に注意!

☆この時期に考慮したいこと☆

①第二乳臼歯の脱落後、第二小臼歯の萌出スピードが速いため、6歳臼歯近心面チェックがなされない場合がある。すると近心の脱灰など病変に気づくのが遅れてしまう

②6歳臼歯が第二乳臼歯よりも低い状態で萌出している場合では、ケアが困難

③歯肉弁が取れない状態での萌出早期では、ラバーダムがかけにくくシーラントが困難

④外見上では歯冠部エナメル質に問題ないが、隠れた象牙質う蝕が起きている場合があり、見つけにくい

 

☆歯科衛生士業務のかんどころ☆

①6歳臼歯近心面の観察

6歳臼歯が萌出、側方歯の交換が進んだ10歳ごろに第二乳臼歯が脱落します。脱落後には6歳臼歯近心面に脱灰があるかを観察します。第二乳臼歯遠心にう蝕があった場合は、高確率で6歳臼歯近心面に初期う蝕が発見されます。このときを逃すと第二小臼歯と接触してしまい初期う蝕の発見が遅れます。

②定期観察中での6歳臼歯の問題を見逃さない

③時期をみてシーラント処置をする

④6歳臼歯の上下咬関係の確認

⑤成長を考慮して保護者とのコミュニケーションに努める

学年が高くなると、塾や習い事で予約が難しくなり、また保護者から離れて子ども1人での来院が多くなります。そのため保護者とコミュニケーションがとりづらくなります。

手紙や連絡ノートなどの工夫で、来院が中断しないようにする努力が一段と必要となってきます。

⑥デンタルフロスによるケア

完全萌出後には、遠心にデンタルフロスを使うように伝えます。これは、6歳臼歯だけでなく、第二大臼歯を守るためということも理解してもらいましょう。

 

《まとめ・感想》

6歳臼歯は「歯の王様」と呼ばれるとても重要な歯です。しかし、永久歯の中では最もう蝕になりやすい歯です。そのため、かかりつけ歯科医と歯科衛生士が、なるべく早い時期から支援の手を差しのべ、6歳臼歯を守っていくことが大切です。子どもの成長発育は様々です。歯科衛生士はどの時期に何をすべきか、その子どもに合わせた計画を立て、認識しておく必要があります。このことが子どもたちの将来的な正しい歯並びや噛み合せ、咀嚼の上達に繋がります。                                                          衛生士 関口                                             

  2014/04/01   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

「高齢期の根面う蝕ストラテジー」について、勉強会で発表して

 

あなたの患者さんがもつ危険因子はどれ?

 

一般に、人は加齢にしたがい根面う蝕のリスクが高くなります。

 全身状態や生活  ①身体機能の低下

          ②全身疾患&服薬

          ③食生活

          ④気力の低下

 高齢者特有の口腔 ①歯周病

          ②補綴物・義歯

          ③楔状欠損

          ④歯髄の変化

     上記すべてが高齢者の根面う蝕の因子と考えられる。

 

全身状態や生活

①身体機能の低下が関係する理由とは?

●手指感覚が低下し、ブラッシングや歯間ブラシがうまく使えない

●視力が低下し、自分の口の状態や病変が見えないため十分なセルフ

ケアができない

    *対策と気をつけるポイント

     セルフケアをプロフェッショナルケアでサポートしよう

      高齢者の場合、染め出しや、PCRはセルフケアができなくなって

      きた部位を術者側が確認するためと、セルフケアが低下している

      部位に対して、どうサポートする必要があるかを把握するために

      活用できる。

     口の筋力と唾液分泌量を低下させないトレーニングをしよう

      日常的も噛み応えのある食品を取り入れてゆっくり咀嚼する。

      ガムを噛むことで、咀嚼筋や唾液の分泌量が衰えないように指導

      する。必要に応じて唾液腺のマッサージや、食前の口腔周囲筋の

     ストレッチ体操等を薦める。

 

   ②全身疾患&服薬

    ●全身疾患の症状として唾液分泌量が少なくなる

    ●治療薬の副作用で口腔乾燥症になる場合がある

    ●全身疾患が原因で体が動かしづらく、セルフケアが困難である

   *対策と気をつけるポイント   

    患者さんの服用薬は必ず把握しよう

     患者さんが服用している薬の把握は必須です。薬の名前を覚えてい

     ない患者さんも多いので、「お薬手帳」や処方箋、糖尿病手帳等を

     持参してもらいましょう。また、薬の副作用項目に「口渇」などと

     書いてあっても、すべての人に口腔乾燥症の症状がでるわけではな

     いので、診査時に粘膜の観察をする。

 

   ③食生活

    ●一回ごとの食事摂取量が減少し、間食が多くなる

    ●味覚が鈍くなるため、甘味の強い食べ物を好むようになる

    ●健康に良いとうたった食品を極端に摂ることがある

   *対策と気をつけるポイント

    患者さんの生活を責めず、できることを一緒に考えよう

     話しの中から、それぞれの患者さんの個性や状況にマッチする、ま

     た患者さんが受け入れ可能な改善方法を提示する。   

 

   ④気力の低下

    ●やる気が低下しているためセルフケアが持続・定着しない

    ●指導されたことを忘れてしまう

   *対策と気をつけるポイント

    できることを少しずつ進めよう

     患者さんの身体的変化や生活状況にも気配りし、話しをよく聴き、    

     患者さんができることに合わせるのも大切なセルフケア指導です

     清掃用具の選択も極力シンプルで継続できるものを指導する。その                                                                                        ・                                                                                        ・    分リスク部位の支援として、プロフェッショナルケアの間隔を短く                                   ・                                                                               ・    設定する。通院困難な場合は、患者さんのご家族とコミュニケー                                    ・                                                                              ・    ションを取り協力を得ることも時には必要となる。

まとめ

 加齢にしたがい根面う蝕のリスクが高くなるのは、高齢者の「全身状態や生活」「高齢者特有の口腔」が深く関      ・                                                                                      ・係しています。一般に50歳過ぎると暦年齢と生物学的年齢の間に大きな個人差が生じるといわれているそ                                  ・                                                                                         ・うです。患者さんの口腔内はもちろん身体や背景にあるものを把握するのは必須です。今回は全身状態や生             ・                                                                                 ・活がなぜ根面う蝕に関係しているかがわかりました。また、「高齢者特有の口腔」についても調べていきたいと          ・                                                                                 ・思います。                                                                             ・                                                                                 ・                                                            衛生士 赤木

  2014/03/21   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

「マイナス1歳からはじめるむし歯予防」を読んで(2)

 家族から子どもにできるかけがえのない贈り物

子どもにとって最先端のむし歯予防=プライマリー・プライマリー・                        プリベンション(一世代前からの予防)

 

お口の中がハイリスクな妊婦さんにとって、キシリトールは強い味方。

 

キシリトールの選び方・食べ方のついて

《キシリトール製品の選び方》

①歯科専用がベスト

 歯科専用のキシリトールガムは甘味料にキシリトールを100%使って     います。(市販のキシリトールガムはキシリトール50%)

②含有量の表示を確認

③含有量が書かれていない場合、【糖質0g】であることと、炭水化物とキシリ トールの分量が限りなく近いものを選ぶようにします。

 

 

 

 

《キシリトールガムの食べ方》

1日5~10gの量を3回以上に分けて摂取するとむし歯予防に効果的

3ヶ月間続けるとお口の中に変化がでてくる

継続的に食べていれば、中断しても予防効果はしばらく持続する

 

 

 

 

 

 

妊娠期に食べてもキシリトールは安全

2つの国際機関(FAOとWHO)の合同食品添加物専門会議(JECFA)によると 1日の許容摂取量についてキシリトールガムに関しては特定せず、と定義      =キシリトールガムは何個食べても大丈夫

                                            感想・まとめ

「マイナス1歳からはじめるむし歯予防」は妊婦さんだけを対象とした感染予防 対策ではありません。将来結婚・出産を経験する女性はもちろん、旦那さん、  おじいちゃん、おばあちゃん、家族みんなで取り組む健康増進法だと言えます。

これから生まれてくる赤ちゃんへのかけがえのない贈り物として「マイナス1歳 からはじめるむし歯予防」を実践することは、将来への安心であり、親としての 責任ではないかと思いました。

                            衛生士 関口              

  2013/08/04   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

「マイナス1歳からはじめるむし歯予防」を読んで(1)

 

“感染症”であるむし歯について

 

 ●子どものむし歯はむし歯菌が口の中に感染することから始まる。

 

          ↓(感染した後)

 

   砂糖の食べ方や歯みがきの習慣によってむし歯菌の数が増加して、

 

むし歯になりやすい状態になる。

 

  

 

   ●むし歯は感染症だが、むし歯菌の感染だけで発症するわけではない。

 

    むし歯には2つの段階がある。

 

      ステップ1 「菌がうつる」段階      感染症

 

      ステップ2 「菌がうつったあと」の段階  生活習慣病

 

 

 

   ●むし歯菌が感染しやすい時期、特に注意したほうがよい時期。

 

     むし歯の定着時期は「歯が生えたあと」。

 

生後1歳7ヶ月~2歳7ヶ月は特に感染しやすい時期である。

 

 

 

むし歯菌の感染を防ぐための基本

 

   歯科医院でのクリーニングを定期的に受ける

 

→お口の中のむし歯菌の量を減らすため

 

   子どもと同じ箸やスプーンを共有しない、噛み与えをしない

 

→唾液によるむし歯菌感染を防ぐ

 

   お砂糖が入った食べ物や飲み物を控える

 

→むし歯菌が口の中に感染するときに、砂糖がすでにあると

 

むし歯菌がすみつきやすくなるため

 

  

 

 日常生活で、禁止づくめで成果を上げるのは極めて困難な時代。

 

          ↓ (発想の転換)

 

   子どもにうつる前にお母さんのお口の中にいるむし歯を

 

「感染しても、お口の中にすみつきにくい菌」に変えてしまう。

 

 

 

感染を予防するための心強い味方とは?

 

      キシリトール・・・「むし歯菌の質を変える」働きがある。

 

●むし歯菌(ミュータンス菌)には、悪玉ミュータンス菌と

 

 善玉ミュータンス菌の2つがある。

 

悪玉ミュータンス菌:がんこで歯からはがれにくい

 

善玉ミュータンス菌:歯からはがれやすい

 

 

 

 あらかじめ口の中にいる菌の質を歯からはがれやすい状態に変えておけば、

 

 万が一お母さんから子どもへうつっても安心。

 

 

 

●妊娠中に口の中の悪玉菌を善玉菌に変えておくことが大事。

 

    そのためキシリトールが活用できる

 

●歯垢が落としやすくなるので、歯磨きもラクになる

 

●ネバネバしていた口の中がさらさらになる。

 

 

 

妊娠中からキシリトールを食べるとどうなるか?

 

 研究結果で明らかになった効果

 

  効果その1 お母さんから子どもへのむし歯菌感染を防ぐ。

 

  効果その2 むし歯菌が口の中にすみつく時期を遅らせることができる。

 

 

【感想】

 

この本でむし歯は感染症生活習慣病といわれ、あらためてその言葉におそれ

を感じました。予防法では同じ箸やスプーンなどの共有はさけるとか、砂糖の

入った食べ物・飲み物は控えるなどありましたが、いくら気をつけていても

日常の生活では限界があります。禁止項目を連ねるのではなく発想の転換を

してあらたな解決方法として、キシリトールをうまく活用し効果を上げること

に共感しました。また、子どもへのむし歯の影響は妊娠中からも始まっている

ので生まれる前からの指導も十分におこなっていく必要があると思いました。

 

                            衛生士 赤木

 

  2013/07/21   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

根面う蝕ストラテジーについて、勉強会で発表して

【根面う蝕ストラテジー】

  参照:歯科衛生士2011.10月号「高齢期の根面う蝕のストラテジー」より

 

◆高齢期の根面う蝕の因子

●全身状態や生活            ●高齢者特有の口腔

身体機能の低下            ①歯周病

全身疾患&服薬            ②補綴物、義歯

③食生活                ③楔状欠損

④気力の低下              ④歯髄の変化

 

楔状欠損

○罹患部位が歯根であるため、もともとハイリスク

○歯根面が楔状欠損になっている場合、う蝕になりやすい

○すでに根面にある楔状欠損部分がう蝕になるとすぐに重篤な症状を示す

 

楔状欠損の要因

ブラッシング圧、歯ぎしりによる咬耗、噛みしめ圧迫症候群(DCS)etc

 

 

◆根面う蝕と楔状欠損の発病と進行にかかる疫学的なコンセプト

予備期

1.歯肉退縮 ①初期退縮 ②中等度退縮 ③高度退縮

2.プラーク蓄積

3.咬合異常

4.口腔乾燥

5.加齢

 

第1期(初期)

1.初期根面う蝕 ①着色 ②白濁斑 ③ピンポイント状う蝕

 

第2期

1.中等度または進行性の根面う蝕。黄色または褐色の着色のあるう窩〔進行性のう窩〕

2.再発性う蝕

3.知覚過敏

 

第3期

1.進行性崩壊

暗褐色または黒色のう窩〔進行の停止したう窩〕

2.処置歯根面

3.環状う窩

 

 

対策と気をつけるポイント

 エビデンスに基づいた情報を伝えて、フッ化物をうまく利用してもらおう

加齢による根面う蝕予防として、54歳以上の成人に対しフッ化物配合の歯磨剤を1日に2回1年間使用したところ、67%の予防効果があったと示唆されました。また、45~65歳の成人に対し、フッ化物配合歯磨剤とフッ化物洗口(225ppmF)を3年間併用した研究結果からも、同じく根面う蝕予防効果が見られました。

根面う蝕予防も一般的なう蝕予防と同様に、プラークコントロールに加えてう蝕抵抗性の高い歯質をつくることが基本となります。フッ化ナトリウムやフッ化第一スズといった歯質強化に加え、酸産生を阻害する効果があるフッ化物が配合された歯磨剤を、患者さんのセルフケアに取り入れてもらうよう指導します。同時に、プロフェッショナルケアでの高濃度フッ化物やフッ化物配合のバーニッシュ塗布も積極的に実施します。

 

 

根面う蝕を防ぐために、どうケアする?

◆セルフケア

  ●歯ブラシ・補助用具…露出根面に合う幅広のヘッド、歯肉や粘膜に毛先 

    が当たっても痛みがなく擦過傷にもならない軟毛の歯ブラシ

※高齢になるほど、単純な作業を心がけ継続してもらうよう指導

 する。色んな種類のツールを使うより、個々の手指や視力の状態にあわせ、なるべく単純で習慣になりやすいものを。

 

  ●洗口剤…患者さんがセルフケアに協力的かつ継続できるようであれば、 

      抗菌作用のあるトリクロサンクロルヘキシジン洗口剤でブクブクうがい。

  ※ブクブクうがいは口腔体操(口筋力UP、唾液分泌量UP)を 

   兼ねるのでオススメ。

フッ化物配合歯磨剤との併用が効果的。

(『コンクール』は本来歯周病用だが、根面う蝕のセルフケアにも 

 評価)

 

  ●フッ化物配合歯磨剤…市販の歯磨剤でいい場合もあるが、根面が広範囲 

           に軟化しているものの経過観察としては研磨剤無配合のものをすすめる。

  ※蓋の開け閉めが困難な方には、量の調節もできるポンプ式容器  

   がオススメ。

 

●音波歯ブラシ…歯ブラシを細かく動かせない方に。

  ※歯ブラシの背が頬粘膜に当たってマッサージとなり唾液分泌量増加 

   も期待できる。

   最近は軟毛のものも発売されている。

 

●ガム…義歯にくっつかないガムを使って咬筋を毎日トレーニングする。

    噛む力の持続・刺激唾液の分泌量増加が期待できる。

  ※ガムを飲み込まないか医院で確認してからすすめるようにする。

 

●その他…セルフケアを継続してもらうためには患者さんの好みや選択を 

     尊重することも重要。

 

 

Ex.歯間ブラシやデンタルフロスがなかなか使えなかった患者さん。

根面う蝕のリスクが高いことを伝えると、自分でウォーターピック

を購入・使用されるようになった。

 

 

◆プロフェッショナルケア

  ●超音波スケーラーによる洗浄

    高齢者の露出根面は非常に軟らかくなっている。スケーリングには超音波スケーラーを使用するが、刃を根面にはあてず、水の噴射だけで汚れを吹き飛ばすように除いていく。あるいはプラスチックチップやサスブラシの使用も考慮に入れる。

 

  ●ポリッシング

    毛が細く軟らかいスクリューブラシ(スマートプロフィーブラシスクリューソフト)と研磨剤のないジェルコート(Concoolなど)でポリッシングを行う。ラバーカップを使うよりもはるかにソフトに磨く

    ことができる。

 

  ●フッ化物塗布

    前歯はフッ化物配合バーニッシュ(Fバニッシュ)またはフッ化物

    配合歯面塗布剤が、臼歯にはフッ化物ジアンミン銀溶液(サホライド 

    等)が応用できる。Fバニッシュは本来知覚過敏対策の薬剤だが、

    この場合はフッ化物の補填目的で使用する。塗布後は水を含ませた綿で洗う。

 

  ●デンタルフロス

    高齢者にはスーパーフロスを使う。広くなっていることが多い歯間を効果的に清掃できるとともに、軟らかい根面に金属のスケーラーを当てるのを避けるために選択する。

 

  ●ブラッシング

    染め出し液でどこにプラークがたまっているか、たまりやすい場所はどこかを把握してからブラッシングに入る。プラークのたまりやすい場所は患者さんにも伝える。(補綴物のマージンなど)

 

 

 

 

〈考察・感想〉

高齢の方だけに限らず、根面う蝕はよく目にします。

特に最近メインテナンスで担当している患者さんで立て続けに根面う蝕の治療を行う機会がありました。治療を要する前に、発生・進行を防ぐためには何ができるだろうと思い、今回レポートに取り上げました。

参考の資料には根面う蝕の因子として様々な要因がいろいろな方面から挙げられていましたが、私の担当している患者さんの例から今回は、“楔状欠損”を要因とする場合について詳しくまとめています。

 

★実践してみようと思ったこと★

◆プロケア(メインテナンス時)

○スーパーフロスを使用した清掃

→ポンティック下の清掃にしか用いていなかったスーパー

 フロスですが、場合によってはこんな使い方もあるんだと

 参考になりました。根面にはプラーク残存しやすいですが、歯間部の辺りはどうしても歯ブラシだけでは取り除きにくい部分もあり、スケーラーを用いて除去していました。フワ

 フワとやわらかいスーパーフロスなら、スケーラーよりも

 優しく清掃できそうなので、早速試してみたいと思います。

 

◆セルフケア(患者さんへの提案、オススメ)

○フッ化物配合歯磨剤(研磨剤無配合)

→カリエスリスク(根面う蝕に限らず)の高い患者さんには

 これまでもオススメしていましたが、やはりう蝕の予防にはフッ化物の応用が基本だと改めて再認識できたので、状況に合わせて今後もオススメしていきたいと思います。

またオススメする際の説明も、今回のレポートの参考資料にあった内容を取り入れて工夫していきたいです。

                 衛生士 西内

 

  2012/02/27   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防