スタッフレポート

歯周病

「歯周病の危険因子とメインナンス」について、勉強会で発表して

歯科衛生士に求められることは

① 歯周病を発症させない(一次予防)

② 早期発見・早期治療(二次予防) の2つ。

歯周病が発症しないように、歯肉が健康な若い時からメインテナンスを継続し、歯周病の発症を

患者さんの人生を通して予防することが理想である。

そのためには歯周病の危険因子についても知っておく必要がある。

○3つの危険因子 歯周病の原因は病因・宿主・環境がある。歯周病の発症・進行に関係があると考え

られる因子を危険因子(リスクファクター)と呼ぶ。危険因子があるから必ず歯周病になるわけでは

ない。Van Dyke&Sheileshは「危険因子に暴露することで歯周炎が起こる可能性が増加する。リスク

ファクターは原因の1つではあるが、それがあったとしても歯周炎が必ず発症するとは限らない。」と

定義している。

1. 病原性の高い歯周病菌

  病原性の高い歯周病菌が患者さんのバイオフィルムにいるかいないかはとても重要なことである。

  レッドコンプレックスの3種類の細菌は最も歯周病原性が高く歯周病の大きな危険因子である。

  レッドコンプレックス感染による歯周炎なのか、多量のバイオフィルム蓄積による不潔性歯周炎

  なのかを区別しながら患者さんの歯周治療方針を決めていくことも必要。

2. 宿主感受性

  歯周病は歯周病菌による感染症ですが、同じように感染を受けても発症する人・しない人、症状が

  重い人・軽い人がいる。免疫や歯周組織の抵抗性に影響を与える生活習慣も重要である。

  ストレスや不健康な生活は免疫力や抵抗力を弱め、歯周病への宿主感受性を高めてしまう。

3. 生活習慣に潜む危険因子

  毎日の生活習慣は宿主感受性に大きな影響を与える。代表的なものとして、肥満・喫煙・飲酒・

  ストレスがある。口腔衛生指導に加え、説得力のある生活習慣指導の力を身に付けることも大切

  である。

○メインテナンス  

 歯周病は発病しても自覚症状に乏しい病気で、歯周治療によって症状が改善しても、いつの間にか

 再発が起こる可能性がとても高い病気である。歯周病の症状を再発させず、健康な状態を維持して

 いくためには生涯を通した定期的なメインテナンスが不可欠である。

 ・目的

  歯周病の症状が治まっていても、歯肉退縮や骨吸収によってプラークコントロールが難しくなって

  しまった個所は残っているし、出血箇所や、浅くならないポケットなど、再発してもおかしくない

  部分がある場合もある。歯周病菌はそんな部位にバイオフィルムを蓄積させて成熟させようとして

  いる。なのでバイオフィルムが成熟する前に取り除くことが大事である。

  患者さんのセルフケアの状態を確認することも大きな目的である。症状がないことへの安心から

  口腔清掃へのモチベーションが下がってないか、加齢や疾患によってブラッシング技術や意欲が

  低下していないかを確認する。そして患者さんの生活環境や生活習慣の変化を把握して、歯周状態

  によくない因子の除去に努めることが大事である。

○感想  

歯周病のリスクファクターについて改めて学ぶことができた。口腔清掃指導はもちろん それぞれの患者

さんにあった指導を心掛けることが大事だと思うけど、毎日の生活習慣 も歯周病の原因になってしまう

恐れがあるので、患者さんの情報をしっかり把握し、生活習慣なども含めて指導していくことが大切だ

と思った。そのためにも、技術と適切な 指導ができるような知識や適応力を身に付けられるように努力

していきたいと思った。

                            衛生士 檜垣

  2023/10/29   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「P.g菌の増殖と上皮バリア」について、勉強会で発表して

1、P.g菌と鉄の関係

P.g菌は強力な歯周障害性を持つ代表的な歯周病菌だが、弱点は多い細菌種である。

・空気中の酸素に曝露される環境では生育できない

・pH6.0以下の酸性状態である環境では生育できない

・鉄分とタンパク質が必須

ヒトの体内には遊離の鉄イオンは存在しておらず、トランスフェリン、フェリチリン、ラクト

フェリン、ヘモグロビンなどの鉄結合性タンパク質と結合した状態で代謝あるいは保存されている。

これは細菌に鉄を奪われないための人体の知恵である。ヒト体内の鉄は細菌に利用されないように

しっかり管理されているにもかかわらず、P.g菌をはじめとする歯周病菌は血液中のヘモグロビンから

へミン鉄(鉄を含むポルフィリン)を摂取することができる。

2.上皮バリアの役割

皮膚は上皮バリアの代表例だが、粘膜を覆う上皮細胞も、私たちが歯周病菌との共生状態を維持する

ための重要なバリアである。歯肉上皮バリアは、バイオフィルムから歯周組織を守る物理的障壁である

とともに、細菌の栄養となる成分が、歯周組織から歯周ポケット内に滲出するのを防いでいる。

歯肉縁上バリアが機能している段階では、P.g菌をはじめとする歯周病菌と歯周組織との拮抗状態は

維持されており、歯周病の発症には至らない。炎症が進行して常にバリアが破られ潰瘍ができた時、

流れ出た出血を栄養としてP.g菌などの歯周病菌は増殖し、バイオフィルムと歯周組織の拮抗バランス

が崩れ、慢性歯周炎が発症する。

3.P.g菌は傷の治癒を阻害する

手や足の傷口は放っておいても治る。これは、潰瘍面周囲の上皮細胞たちが増殖し、潰瘍面を埋める

ように移動(遊走)して潰瘍を閉じる。ところが、歯周ポケット内の潰瘍は自然には治らない。

バイオフィルムの刺激によって慢性の炎症が続いているために、上皮バリアの損傷は止まらず、潰瘍面

の修復には至らない。そして、P.g菌が上皮バリアの閉鎖を阻害する。

細胞の足である接着斑はいくつかのタンパク質で作られている。このタンパク質の1つでも障害を

受ければ細胞は遊走しなくなる。P.g菌は上皮細胞内に潜入し、この接着斑の部分タンパク質を

分解する。そのため、細胞の接着斑は破壊され、細胞は遊走できなくなる。P.g菌に非感染部位では、

細胞が潰瘍面を埋めるように移動・増殖し、1~2日で再び均一な単層を形成する。しかし、P.g菌が

感染すると歯肉上皮細胞の、移動・増殖は阻害され、潰瘍面は埋まらない。これが歯周ポケットで

起きているのである。

4.歯周治療の目標は、歯周ポケットからの出血を止めること

歯周治療の目標は

・歯周ポケットを浅くする

・アタッチメントレベルの増加

・骨レベルの改善

・付着歯肉幅の増加

と言われる。

歯周ポケット内の潰瘍面から血液が供給され続ける限り、バイオフィルムの高病原性は維持し歯周炎は

進行する。歯周ポケット内の出血を止めるには、潰瘍面が細胞で埋められ上皮バリアが修復されること

が必要である。 基本治療で目指すことは、歯周炎発症までの過程を逆に辿り、バイオフィルムの病原性

を歯周炎発症前のものに戻すことだ。つまり、ポケット内の出血の停止である。ポケット内の潰瘍の

閉鎖により、歯周病菌への血液の供給を断ち、かつての低い病原性しか持たないバイオフィルムに戻す

必要がある。歯周ポケットのマイクロビオーム(常在微生物叢)を元の状態に戻し、「歯周病菌と

歯周組織の拮抗による共生関係」を取り戻すことによって、歯周状態も元の状態に戻っていく。

5.メインテナンスの目的

歯周病の症状が治まっていても、歯肉退縮や骨吸収によってプラークコントロールが難しくなって

しまった箇所は残っており、BOP陽性ポケットや、浅くならないポケットなど、再発してもおかしく

ない状態の場合もある。歯周病菌はそんな部位にバイオフィルムを蓄積させて成熟させようとして

いる。新しい部位にバイオフィルムが蓄積する前に壊してしまう必要がある。成熟化しているバイオ

フィルムを定期的に全て除去する。そうすることで高病原性化しつつあったバイオフィルムを低病原性

の状態に戻す必要がある。患者さんのバイオフィルムの病原性が高くなるタイミングには個人差が

ある。メインテナンスの間隔も患者さんごとに異なるはずだ。わずかな蓄積でもバイオフィルムが成熟

し高病原化するのか、そうでないのかを見極めるために、歯周治療が終わってから1ヶ月後、2ヶ月後、

3ヶ月後と徐々に間隔を空けて患者さんの歯周状態を観察するべきである。そのためには、患者さんの

セルフケアの状態を確認することも大きな目的である。症状がないことへの安心感から口腔清掃への

モチベーションが下がっていないか、加齢や疾病によってブラッシング技術や意欲が低下していないか

を確認する。そして、患者さんの生活環境や生活習慣の変化を把握して、歯周状態に良くない因子の

除去に努める必要がある。

6.感想

歯周病を完治させることはできないが、出血を抑えることで、歯周病が発症するためのバイオフィルム

が低病原性のものになり、歯周病を抑えることができるということが分かった。メインテナンスのTBI

を教えてもらい、出血がしやすい原因なども理解できたので、それを用いた上で、問診やメインテ

ナンス時の口腔観察を努めていきたいと思った。患者さんがセルフケアだけではなく定期検診に通って

もらい、さらに自分の口腔内を綺麗に保つモチベーション向上のため、炎症の指摘だけのTBIでは

なく、歯周病についてしっかりと理解してもらえるよう、口腔状態を伝えていきたい。

                        衛生士 小鐵

  2023/02/05   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「歯周病の予測」について、勉強会で発表して

Ⅰ.歯周病の危険因子について

 歯周病の原因は

 ①歯周病菌、歯石やプラーク、外傷性咬合といった病的因子 

 ②免疫や組織抵抗力といった遺伝、ストレス、口腔解剖学的形態といった宿主的因子 

 ③生活習慣、教育や文化、経済や医療、保健といった環境的因子

 の3つがあります。

 これらは、歯周病の発症・進行に関係があると考えられる因子で、リスクファクター(危険因子)

 と呼ばれています。しかし、リスクファクターがあるから必ず、歯周病になるというわけでは

 ありません。ただ、発症や進行の可能性は増加します。

Ⅱ.病原性の高い歯周病について

 患者さんのバイオフィルムに、病原性の高い歯周病菌がいるか、いないかは、とても重要です。

 レッドコンプレックスは病原性が高く、大きな危険因子です。なかでも、Ⅱ型のP.gingivalisは、

 高病原性の細菌です。これに感染すると、非感染者と比べて44.44倍も歯周炎が発症する危険性が

 高くなります。歯周病のリスク因子として有名な喫煙や糖尿病と比べ、かなり高い値です。 対策方法

 として、細菌検査や臨床症状からリスク判断ができます。もし、細菌検査が可能であれば、十分な

 ブラッシングや定期的プロフェッショナルケアなどの歯周病予防対策を早めにスタートすることが

 できます。もし、細菌検査ができないのであれば、治療効果の推移と合わせて、歯周病の病原性を

 推測することができます。歯周治療方針を決めるうえで、とても大切なことです。

Ⅲ.歯周病の発症・進行への影響について

 世の中には、歯周病になりやすい体質の人と、そうでない人がいます。これは、遺伝的要因によって

 異なってきますが、そのメカニズムははっきりとは分かっていません。ストレスや不健康、妬みや

 恨みなどの悪い感情は免疫力や抵抗力を弱めます。生活習慣も重要です。 生活環境は、毎日患者さん

 と共にあり、歯周病の発症・進行に大きな影響を与えます。患者さんのことをよく知り、生活作り

 から、一生涯に渡って続く、歯周病のメンテナンスが始まります。良い生活習慣を保てないことは、

 歯周病の危険因子といえます。 望ましい健康生活とは、健康的に食べて、動いて、寝ることです。

 お酒は控えめで、タバコとストレスは百害あって一利なしです。口腔の健康習慣は、歯肉縁・歯間部

 の清掃と定期的歯科受診です。よく噛むこと、硬いものを食べること、カルシウムを取ることも

 歯周病予防に効果的と言われていますが、科学的根拠はありません。

Ⅳ.代表的な危険因子について

 歯周病は中年以降が圧倒的に多く、年齢と共に発症リスクがUPします。また、女性より男性の方が、

 飲酒や喫煙などの生活習慣や性格の面から考えて、高リスクであることが多いです。 危険因子の代表

 は、肥満、喫煙、飲酒です。BMIが22前後の人と比べて、25以上の人のリスクは約3倍、BMI30以上

 では約9倍となります。また、糖尿病が発症するとリスクは3~11倍となります。受動喫煙もリスクが

 あり、非喫煙者よりも喫煙者は5倍、受動喫煙者は3倍です。毎日、大瓶ビール1本程度を飲み続ける

 と、リスクは約3倍となります。また、飲酒する人の中で、顔が赤くなるか、赤くならないかでも

 リスクが異なります。赤くなる人は、33ml以上のアルコールを毎日飲むと、4.28倍リスクが高く

 なります。飲酒で顔が赤くなる人には、飲酒を控えるように伝える必要があります。

Ⅴ.歯科衛生士のミッションについて

 患者さんは、いろんな危険因子に囲まれて毎日を過ごしています。歯周病の発症を患者さんの人生を

 通して予防することが理想です。どんな重要な歯周炎でも必ず始まりがあります。その時を

 見逃さない目をもって、早期発見・早期治療をする。日常から支えていくことが歯科衛生士の使命に

 なります。

Ⅵ.感想

 患者さんの体のタイプや生活環境から、患者さんの口腔内も出来上がっているので、問診でいろんな

 情報収集をすることが、とても大切であると感じました。また、口腔内所見からはもちろんですが、

 普段の何気ない会話から、患者さんの変化が分かることもあります。なので、定期メンテナンスに

 通ってくださっている患者さんの変化に早く気づいて、歯周病の進行を遅らせていくことができる

 のは、歯科衛生士の腕の見せ所であると思いました。 自分もそういった目で日頃、過ごしていける

 よう今後も頑張ります。

                     衛生士 福田

  2022/12/04   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「コロナ禍で歯周病のリスクが高まっているのはなぜか?」について勉強会で発表して

<歯肉炎>

歯肉が腫れ、ブラッシング時などに出血しやすい状態 

<歯周炎>

さらに歯肉が腫れ、退縮し、骨吸収を起こした状態

→プラーク中の細菌が歯肉に炎症を起こし歯槽骨を溶かす

歯周病の初期はほとんど自覚症状がなく、自覚するころには重度になっていることがあるので注意。

歯周病菌は一度定着すると0にすることはできないので、早期に発見し、予防することが大事。

他人の唾液から感染することが多いため、直箸や回し飲みなどには気を付ける。

歯周病菌は、18歳から住み着きやすくなり、30代以降から増える。

●コロナ禍で歯周病のリスク

・受診を控える 

・マスクでの口呼吸

→マスクをすると息苦しいため、空気を多く吸える口呼吸になりやすい

口呼吸により口腔内が乾燥すると、唾液による抗菌作用などが減り、菌が増殖しやすい環境になる。

これが歯周病や口臭へとつながる。さらに、プラークが固くなり、取れにくくなることもある。

●口呼吸をしないための対策として

①口を閉じる意識づけをする

②トレーニングや体操をして、口腔周囲の筋肉の力を鍛える

③人と距離を取れる時はマスクを外す

などがあげられる。

●インフルエンザの感染リスクについて

歯科衛生士によるクリーニングをした対照群の罹患率…約1%

セルフケアや介護士によるクリーニングをしたグループの罹患率…9.8%

専門的な口腔ケアをすることでインフルエンザの感染リスクを減らすことができる可能性がある。

●歯周病によりコロナでの死亡率があがる?

歯周病の人が新型コロナウイルスに感染した場合、歯周病ではない人と比べ

死亡率…8.81倍

人工呼吸器を使用…4.57倍

集中治療室に入院…3.54倍

合併症発症…3.67倍

→歯周病菌がコロナの重症化と関係しているのか、歯周病の人に基礎疾患が多いことが影響している

のか明らかになっていないが、歯周病の人はコロナの重症化リスクが高い。

歯周病菌は全身の健康に関係しており、周術期のケアで入院日数が短縮されることもある。

●歯周病のセルフチェック項目の例

・物がつまりやすい

・浮いた感じがする

・歯並びが変わった

・歯が揺れている

●歯周病に効果的な磨き方 

・歯間部に毛先を入れ、磨くのではなく揺らす

・斜め45度で当てる

・個人の口腔内に合った指導をDHから受ける

<感想>

私自身、マスクをしている時、無意識に口呼吸になっているときがあるので、口内を健康に保つために

も鼻呼吸を意識したいです。歯周病により歯肉が退縮した患者さんは、それを見て「歯が長くなった」

と感じることもあるそうで、患者さんによりさまざまな表現の仕方があるのだと感じました。

患者さんにコロナウイルスと口腔の関係などを質問された際に、間違った回答をしないよう勉強して

いきたいです。

                             衛生士 國只

  2022/04/10   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「歯周病発症のきっかけ」について、勉強会で発表して

〈鉄分とPg菌〉

レッドコンプレックス(特にPg菌)には栄養素として鉄分が不可欠である。Pg菌は、血液中のヘモグ

ロビンからヘミン鉄を手に入れる。しかし、健康な歯肉溝や出血を伴わない歯周ポケットには血液が

ないため、ヘミン鉄を摂取できない。この栄養不足の状況下では、Pg菌は歯周組織に定着していても

増殖することは難しい。増殖できても病原性は低いため、歯周炎は起こらない。

〈歯周組織を感染から守る上皮細胞〉

上皮細胞はバイオフィルム細菌から歯周組織を守る物理的障壁であるとともに、細菌の栄養となる成分

が歯周組織から歯周ポケット内に滲出するのを防いでいる。また、上皮細胞表面の自然免疫レセプター

が細菌を感知し、上皮細胞から免疫物質や抗菌物質が分泌される。

〈プロービング時の出血は上皮細胞が壊されたサイン〉

口腔清掃不良、あるいは宿主抵抗力の低下によって歯周組織に炎症が生じると、歯肉内縁上皮細胞が

剥がれ落ち、潰瘍面ができる。(潰瘍とは、上皮が剥がれてなくなった状態のこと)そのため、潰瘍面

に露出した毛細血管から歯周ポケット内に血液が常時供給されるようになる。

この血液は、プロービング時の出血、あるいはブラッシング時の出血として観察される。

〈ブラッシング時の出血は歯周病発症のサイン〉

血液を供給された歯周ポケット内のPg菌などの歯周病菌は、赤血球のヘモグロビンを分解して、ヘミン

鉄を菌体内に取り込み、さらに血清タンパク質を栄養として大幅に増えバイオフィルムの病原性を一気

に高める。バイオフィルムの病原性が高まると、歯周病菌と歯周組織の拮抗バランスが崩れる。

この時が歯周炎発症の瞬間である。

〈上皮細胞を修復する方法〉

歯周基本治療によって歯周ポケットの出血を止めることができる。歯周病菌の細菌量が減れば、

歯周組織の創傷治癒力がバイオフィルムの病原性を上回る。そして、潰瘍面の閉鎖が始まり、出血が

止まる。スケーリング、ルートプレーニング、生活習慣指導、メインテナンスを行う。

〈感想〉

プロービング時の出血は炎症のサインということが改めてわかったため、検査時に見落としがないよう

に気を付けたい。そして、患者さんの口腔内状態から高リスク部位を見極め、それぞれの性格に合った

TBIができるようになりたい。歯科では専門用語が多く使われるが、患者さんからするとなじみのない

言葉が多いと思われる。今回学んだこともわかりやすく嚙み砕いた言葉で説明ができるように、語彙を

増やしていきたい。

                               衛生士 國只

  2021/09/19   ふくだ歯科
タグ:歯周病

歯周病と全身疾患について、勉強会で発表して

20世紀の末から歯周組織の慢性炎症や歯周病菌が全身に悪い影響を及ぼすという臨床研究が数多く報告

され、歯周病と全身疾患は互いに影響しあうメカニズムが存在しているという考えが定着しました。

 

歯周病が誤嚥性肺炎や低体重児・早産、骨粗鬆症、がん、慢性関節リウマチなどのリスクファクターに

なることが、これまでに報告されており、それにより肥満や高脂血症、メタボリックシンドロームに

繋がっていき、アルツハイマー病、脳血管疾患、心血管疾患、糖尿病、バージャー病、慢性腎疾患など

の全身疾患を発症させる恐れがあります。

 

*歯周組織を守る歯科衛生士は患者さんの全身の健康を守る

動脈硬化部病変を外科手術によって取り除いた症例の多数の組織片から歯周病菌が検出され、歯周病菌

が全身の血流に移行すること(菌血症)と心血管疾患(動脈硬化・虚血性心疾患)の関連が認識され

ました。また、歯周炎の病巣由来の炎症性物質(炎症性サイトカイン)が血流に乗って全身を巡り、

糖尿病などを悪化させていくことも報告されました。 また、歯周病治療によって糖尿病が改善した報告

もいくつかあります。 歯周基本治療は患者さんの全身の健康にも役に立つことがはっきりしてきま

した。歯周組織を守る歯科衛生士は患者さんの全身の健康も守っているわけです。

 

*歯周ポケットの出血を止めて全身疾患を防ぐ

細菌の塊が傷口に押し付けられることによって、歯周組織の炎症は一段と激しくなります。 サイトカイ

ンの嵐と呼ばれる激しい免疫応答がますます活性化され、歯周組織で産生されたサイトカインは血流に

乗って全身に運ばれ、さまざまな臓器、組織で炎症を起こすようになります。さらに、バイオフィルム

細菌は潰瘍面の毛細血管を通じて全身に運ばれます。 細菌が血液中に侵入した状態を菌血症といい

ます。 歯周病菌による菌血症は、スケーリング、抜歯はもちろん、毎日のブラッシングや食事によって

も起こります。これが、歯周病によって引き起こされる全身疾患の原因です。 歯周基本治療によって

ポケット内潰瘍面を閉鎖することは、患者さんの全身の健康を守ることです。

 

感想

歯周病は様々な全身疾患と関係していることがわかりました。 歯周病がリスクファクターとなること

から患者さんの将来や今後のことを考えたうえで指導やTBIをしていく必要があると思いました。 また

歯周病で歯肉が炎症して出血しているときは、細菌の塊が歯周病を悪化させたり、細菌が毛細血管に

乗って全身に運ばれ菌血症となり全身疾患にもつながっていくので、歯磨きやスケーリングをして細菌

や毒素を出してあげることや患者さんにセルフケアの大切さを伝えることが大切だとわかりました。

歯科衛生士として患者さんの口腔内だけでなく全身の健康を守っていくために全腎疾患について知って

おく必要があるなと思いました。 今後TBIを行っていくときに今回学んだことを生かしていきたいと

思いました。

                         衛生士 岡崎

  2021/07/22   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「歯周炎が治るとき、歯周組織にはなにが起きている?」について、勉強会で発表して

 1. 健康な歯周組織の特徴をおさらい

治癒像を理解するためには、病態像の理解が必要です。病態像を理解するためには、まず正常像(病気に

なる前の状態像)を理解することが必要です。

※歯周組織の正常像のポイント

2. 再植後の歯周組織が教えてくれる歯(歯根膜)と歯槽骨の関係

1」が外傷で脱落し、遅延型再植を受け、3年8ヶ月後には、再植された歯の歯根はほぼ吸収されてしまいました。

この時、上顎前歯部をCBCT(コーンビームCT)で診断した像を見ると、健全なL1とアンキローシスに

より歯根吸収を受けた1」の矢状面を比べると明らかなように、右上では唇側の歯槽骨のみが吸収され

ることがわかります。また、吸収は歯髄腔のあたりまであることがわかります。逆に口蓋側では、歯根

が吸収されても骨量は減少することがないことがわかります。  

※「歯根膜が死んでしまった歯」の反応が示すヒント

歯周炎は細菌感染による炎症反応で、歯根膜と歯槽骨が失われる疾患であることはよく知っていると

思います。歯根膜と歯槽骨がなくなる歯科疾患はほかにもあり、感染とは関係ないものもあります。

それが「歯の脱離後の遅延型再植」です。すなわち、外傷などで歯が脱離してしまい、脱離した歯の

歯根膜が乾燥して壊死してしまった状態で時間が経ってから元の位置に再植した場合です。脱離により

抜け落ちた歯はすぐに戻せば問題なく助かります。しかし、口腔外に乾燥状態で長時間置かれると、

歯根膜が死んでしまい、再植後にアンキローシス(置換性吸収)という歯根吸収が起きます。この時、歯

と一緒に歯槽骨も吸収されます。一見歯周病と関係ないこのアンキローシスによる歯根吸収と骨吸収

から、歯周病の進行にともなう病態像と歯周治療後の治癒像を導き出すことができます。

3. 創傷の治癒(推論)

① 上顎中切歯(おそらく上顎前歯部)では、歯根膜を喪失すると(歯を抜くと)唇側の歯槽骨が喪失する

② 喪失は、おおむね歯髄腔のあたりまで進行する

③ 歯槽骨には、「歯に依存する骨量(tooth dependent bone volume:TDBV)」と「歯に依存しない骨量

 (tooth independent bone volume:TIBV)」がある

   ↓

4. 歯周炎の病態像 上記の推論を歯周炎による病態像の進行にあてはめると以下のようになります。

① 歯周炎では細菌感染により炎症が生じ、歯根膜が喪失する

② 上顎前歯の歯槽骨は、唇側はTDBV(歯依存骨)、口蓋側はTIBV(歯非依存骨)とTDBVで覆われている

③ したがって歯根膜がなくなれば、すべての骨量が歯に依存している(TDBV)唇側では同時に骨もなく

 なることを意味し、水平性吸収が生じる

④ 口蓋側でも同様に固有歯槽骨(TDBV)はなくなるが、TIBVは残ることになる。とはいえ、炎症波及に

 よりある程度はTIBVの骨吸収も進行するので、口蓋側では垂直の骨吸収が生じる  

5. 歯周炎を起こしても骨縁上組織付着は存在している

 骨縁上組織付着は、炎症が進行しても失われることはなく、根尖側へ平行移動していくと考えられ

 ます。すなわち、骨欠損底から約数mmの根面には歯石はついていないことを意味します。麻酔下で

 SRPを行うと、ポケット底付近の結合組織性付着を破壊するかもしれないので、注意が必要です。

 

〈まとめ〉

歯周炎の治療には歯根膜の存在が重要であることが分かりました。無麻酔下で歯根膜に触れれば痛みが

あるので除去してしまうことは無いと思いますが、そのことを頭に入れて処置をしていきたいと思い

ます。 また、外傷で歯が抜けたり折れたりした患者さんから連絡があった場合に適切な対応をお伝え

できるようにしておきたいと思いました。

                            衛生士 星島

  2021/01/11   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「21世紀のペリオドントロジー」天野先生のセミナーに参加して

1. なぜ歯周病は起こるの?

  1) 歯周病菌の定着

   歯周病を起こす細菌は歯肉縁下に存在し、その最近叢は3階層に区分された6つのプラーク細菌

   共生集団に分類されています。年齢とともにピラミッドの階層が増え18歳以降にP.g菌が感染し

   最上層が構築されピラミッドは完成します。

   ※ピラミッドの頂点に君臨するレッドコンプレックスが定着しているかどうかがバイオフィルム

    の歯周病原性を決するポイントです。

  2) 歯周病の発生原因

   歯周ピラミッドが完成しても、すぐには歯周病の症状は現れません(不顕性感染)。年齢が若く

   抵抗力も高いなどの理由で長年にわたって歯周組織の健康な状態が続くことが多いと思います。

   しかし歯周病菌は常に発症のチャンスをねらっています(日和見)。加齢や、口腔清掃不良などの

   理由でバイオフィルムの病原性が高まり歯周組織とバイオフィルムの均衡が崩壊したとき歯周病

   が発生します(日和見感染)。一方、生涯にわたって発症しない不顕性感染のままの人もいます。

  3) 歯周病発症から歯周破壊へのロードマップ

   レッドコンプレックスには栄養素として鉄分が必要不可欠です。鉄分がないと、菌は増殖でき

   ず、できたとしても栄養不足のため病原性は低いので歯周炎は起こせません。しかし、病原性が

   高まったバイオフィルムが歯周組織に炎症を起こし、それが慢性化すると歯周ポケット内面に

   潰瘍が形成されます。ポケットの潰瘍面からの出血で鉄分が供給されると菌は大幅に増殖し、

   バイオフィルムの病原性を一気に高め均衡を崩します。この時こそ歯周炎発症の瞬間です。

   「歯を磨くと血が出た」は歯周病発症のサインです。 バイオフィルムと歯周組織との戦いは、歯周

   治療により均衡が取り戻されるまで続きます。歯周病に自然治癒や服薬のみによる治癒はありま

   せん。  

2. 目標はポケットを浅くすることですか?

  1) 歯周基本治療の目標

   歯周治療の目標は、歯周ポケットを浅くする、ALの回復、骨レベルの改善、あるいは付着歯肉幅

   の増加と言われます。しかし、歯周基本治療の最も大事な目標は歯周ポケットを浅くすることで

   はありません。歯周ポケット内で血液が供給され続ける限り、バイオフィルムの高病原性は維持

   し歯周炎は進行します。歯周基本治療によって目指すことは、歯周炎発症へのロードマップを

   逆に辿り、バイオフィルムの病原性を歯周病発症前のレベルに戻すこと、つまり歯周病菌への

   血液の供給を断つことです。歯周病菌とバイオフィルムの均衡が取り戻されれば歯周状態も昔の

   状態に戻り、当然ポケットも浅くなってきます。

  2) 歯周基本治療

      通常の歯周基本治療によって出血を止めることができます。ブラッシング指導、スケーリング、

   ルートプレーニングに始まり、生活習慣指導、そしてメインテナンスです。熟練したテクニック

   が要求されるのはSRPです。未熟な技では出血は止まりません。歯周基本治療によってポケット

   内の歯周病菌を完全に駆逐することはできませんが、細菌量は大幅に減少します。菌の量が減れ

   ば、歯周組織の創傷治癒力がバイオフィルムの病原性を上回り、潰瘍面の閉鎖が始まり出血は

   止まります。菌への血液の供給を断つと、バイオフィルムはかつての低い病原性しかもたない

   状態に戻り、均衡も取り戻されます。ポケットからの出血を止めることはこれほど大きな意味を

   もっているのです。

   ※SRPのポイント

   側方圧が弱かったり、正しい角度でスケーラーのブレードが当たっていなかったり、シャープ

   ニングが不十分でよくブレードが削れなかったりすると、歯石を取り除くことができないだけで

   なく、歯石の表面だけを削り取ってしまいます。そのため、歯面には歯石の表面が滑らかな状態

   で取り残されることになり、そうなると、エキスプローリングでも見逃してしまいやすいし、

   スケーリングも難しくなってしまいます。ルートプレーニングでは刃先のコントロールが重要

   です、力が弱い場合は両手を使うのもひとつの方法です。また、根面の象牙質には限りがあり

   ます。過剰にならないインスツルメーションを!

3. 目標は100%磨き?すべての患者さんに同じブラッシング指導をしていませんか?

 1) バイオフィルムの病原性判別

      歯周炎は慢性歯周炎という診断名で包括されますが、超音波スケーリングだけで簡単に良くなる

   歯周炎もあれば、手を尽くしても進行が止まりにくい重症のものもあります。これはバイオ

   フィルムの病原性に大きく関係しています。病原性の高いレッドコンプレックスが存在し、その

   菌数が多いほどバイオフィルムの病原性は高くなり、このような歯周炎は重症化しやすく治療が

   難しい場合もあります。  

  2) バイオフィルムの病原性に応じたブラッシング指導

   患者のバイオフィルムの病原性によってメインテナンス(歯周管理)の質と頻度は異なります。

   プラークの量が多いから歯周病再発リスクが高いわけではありません。バイオフィルムの病原性

   が低い患者は、歯磨きが上手く出来ていなくても歯周病の急速進行や再発の可能性は低いでしょ

   う。この場合、定期的なプロフェッショナルケアで不十分なセルフケアを補えます。しかし、

   バイオフィルムの病原性が高い患者はわずかな磨き残しでも大きな因子になります。このような

   患者には歯間ブラシやフロスも駆使し、PCRを低くすることを目的とした丁寧なブラッシング

   指導が最初から必要です。バイオフィルムの病原性を判定(あるいは推測)し、歯周炎を見分ける

   ことによって、患者さんごとのオーダーメイドの歯周治療が可能となります。 ブラッシング指導

   は決して楽ではありません。患者にも術者にとってもエコなブラッシング指導を!

4. 合点がいけば人は動く!

 1) 生涯メインテナンス

   歯周管理は患者の生涯にわたって健口を見守る口腔健康管理です。口腔健康管理実践のために

   は、口腔内の危険因子だけではなく、歯周病の発症・進行に強い影響をもつ環境因子にも注意を

   払いたいものです。生活習慣や歯科的知識・教養に加え、ストレスや歯磨き習慣についても患者

   の日常を知り、必要ならその日常を変える心構えで、山あり谷ありの患者の人生に寄り添って

   バイオフィルムと歯周組織の均衡状態を守る生涯メインテナンスが歯科衛生士の使命です。

   ※患者さんとの二人三脚には

    ・望んでいるものだけを(消極的アプローチ) →まず得るものをもたせて帰す

    ・親しくなろう(話を聞く、相手を知る、褒める、笑顔が大切)

    ・目先のゴールは低く(not修行、no頑張ろう) →前回より少しでも良くなっていたら褒める

    ・病状を納得させる説明力(科学的知識) →人が集中して聞くのは15秒ほど、簡潔に!

    ・結果を残せる技術(生物学的治療)

 

まとめ  

 今回の講演で、歯周病の感染は一生続き完治は無いと言われており、疾病が進まないよう口腔内の

 均衡状態を保つためには歯科衛生士のメインテナンスや介入が重要だと改めて感じました。  

 バイオフィルムの病原性や、ポケットからの出血が歯周病に強く関係してくることなどをしっかりと

 頭に入れてこれからのメインテナンスに活用していけたらと思いました。

                               衛生士 星島

  2019/01/06   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「私がこのプロフェッショナルケアを選んだ理由」を読んで

症例1:誤った行動変容により患者が磨かない

患者情報:26歳、女性/病歴:特になし、喫煙習慣もなし/性格:控えめでまじめ、心配性

初診時のセルフケア

•朝昼晩の3回のブラッシング習慣、歯間部清掃なし

•複数の歯科医院で口腔衛生指導の経験があり、すべての医院にて“オーバーブラッシング”を指摘

  された。

問題点

“歯磨きをすれば歯肉が痩せてしまう”という誤った認識を持っており、初診時には炎症はわずか

でしたが、2年後の再来院時には自然出血するほど辺縁歯肉に炎症がありました。再来院時の強い

炎症を持った歯肉は、複数の専門家が単純に“磨きすぎ”情報のみを伝えてしまい、患者さんが“怖くて

磨けない”という誤った行動変容に至ってしまった結果、招いたものだと思います。

何を伝える

口腔内の2大疾患である歯周病とう蝕いずれもバイオフィルム感染症であることを説明し、その対策

には歯面に付着しているプラークの除去が必須であることを伝えました。現状のセルフケアはむしろ

“アンダーブラッシング”であり、このままでは将来的に歯周病による付着の喪失に伴い、さらなる

広範な歯肉退縮を招いてしまう可能性があることも伝えました。

Point

何をみる?→患者さんの歯肉はもともと薄い

歯磨きの方法や歯ブラシの選択は、患者さん固有の歯周組織環境の違いにより異なります。患者さんは

歯肉がもともと薄く、許容できるブラッシング圧の範囲(ストライクゾーン)が狭いことが問題であると

考えました。

どうするケア?→適切な範囲の存在をわかりやすく伝える

この患者さんは歯肉がもともと薄いことから、ストライクゾーンが狭く、オーバーやアンダーになり

やすいことを添え、担当歯科衛生士として患者さんのストライクゾーンを的確に把握し、組織の安定に

導くことを約束して信頼関係を築きました。歯ブラシを処方する際も「なぜその歯ブラシを選ぶのか」

「歯ブラシの特徴」について説明を行うなど、何事にも理由を添えて、専門家が処方した清掃用具で

あることを強調しました。

今後のプロフェッショナルケア計画

もともとオーバーブラッシングとアンダーブラッシングを繰り返している方なので、歯肉に傷がない

か、プラークの厚み、炎症の有無など、そのときどきの歯磨きのクセを観察しています。

 

症例2:多量のプラークがあるが、セルフケアに興味がない

患者情報:59歳、男性/病歴:特になし/性格:せっかち、何事にもきっちり

初診時のセルフケア

•デンタルIQは低い

•1回/日、硬めの歯ブラシ、多量の歯磨剤使用し、大きなストロークで行なっている

•子供のころから親に歯磨きをしなさいなんて言われたことがない

•年を取ったら、歯なくなっていくのは仕方がないと思っている

問題点

多くの歯石とプラークが存在しますが、これまでの習慣で何も問題がなかったことから、セルフケアに

ついてあまり興味がありません。この年齢まで歯周病が進行しなかったのは、この患者さんのバイオ

フィルムが低病原性であり、不潔性の歯周炎と思われます。

何を伝える

歯周治療を行うためには、患者さんに歯周病について理解してもらい、セルフケア徹底してもらうのが

基本です。セルフケアに興味がなさそうであっても「今どうなっているのか」「どのようにすれば問題

を解決できるのか」を伝え、患者教育を行います。

Point

何をみる?→モチベーションがない、磨けていない

多くのプラークや歯石があることから、まずはプラークコントロールの大切さ理解してもらうことが

重要です。しかし、モチベーションのない患者さんに対して厳しく指導すると逆効果になることも

あり、来院途絶えるのは避けたいと考えました。

どうするケア?→ゆっくりと伝えていく

このような患者さんには、患者教育の後一度セルフケアの説明行ったら、プラークコントロール多少

悪くてもSRPをはじめ、歯石が取れると「こんなにすっきりするんだ」という感覚を体験してもらい

ます。それから、歯周病の病因論、セルフケアとプロフェッショナルケア、メインテナンスなどを少し

ずつ伝えていき、ゆっくりと行動変容が起こるのを待つことにします。

口腔衛生指導としては、まずは磨けていないことをわかってもらうことが大切です。そのため、染め

出しもちろんですが、舌で歯を舐めてもらい、ツルツル(磨けている)とヌルヌル(磨けていない)を感じる

ことができるかを練習してもらいました。また、歯磨き回数を増やしてみることを提案しました。

ただし、セルフケアのテクニックについて指導はしません。歯肉を傷つけたり、磨きにくい部位を自分

で感じるようになったら、テクニック指導のタイミングで、補助清掃用具の追加などもこのときに

行います。

今後のプロフェッショナルケア計画

仕事が忙しくなった際に生活習慣が乱れ、それに伴ってセルフケア意識が低くなってしまう傾向がある

ので、来院時には情報収集に努めますが、健康であれば急速に歯周病が進行することはないか考えて

います。むしろ加齢に伴い、全身疾患を有したときに注意が必要だと予測しています。そして治療が

必要になった場合、スムースに移行・協力していただけるように、信頼関係の維持、患者教育も欠かせ

ません。

 

まとめ

今回の症例はどれも患者さんの健康管理のために長期にわたって寄り添っており、う蝕や歯周病の予防

のみだけでなく患者さんの全体のリスクを考慮してケアの計画を立てていました。

プロフェッショナルケアではすべての患者さんに同一のケアを行うのでなく個々の患者さんに合わせた

ケアを考えて行っていくことが必要だと改めて考えさせられました。

                                                                                                                  衛生士 星島

  2018/08/29   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「歯周病と咬合性外傷」について、勉強会で発表して

歯周病は人類が最も多く患っている疾患で私たち歯科医療従事者にとって克服しないといけない大きな

課題です。過去には歯周病による骨吸収が咬合に由来していると考えられた時代がありましたが、

歯周病の発現と進行が細菌と直接関係があることが証明されることによって咬合の歯周病に対する

病原論は疑問視されてきました。

ところが実際の臨床においては炎症のコントロールをしっかりと行っていても悪化の経過をたどる症例

もあって咬合の重要性、すなわち力のコントロールについても大切であることが認識されるようになり

ました。 そのため初診における診査や患者情報の収集そしてメインテナンスやSPTを行っていく上でも

歯科衛生士自身も炎症だけに目を向けるだけなく咬合力の診査も歯周治療の長期的な安定にかかせない

と考えます。

 

衛生士でもできる力の診査をまとめました。

口腔外所見

・顔貌

 丸い顔→咬合力が強い

    面長い顔→咬合力が弱い

・口腔内(歯以外)

    頬粘膜や舌を見たときに白線があるか

    骨隆起があるかどうか

歯と歯肉

・歯肉退縮

・クレフト 

・アブフラクション(WSD) 

・咬耗 

・補綴物のシャイニングスポット(摩耗によって滑沢となった部分)

・歯の動揺・フレミタス(咬合時におけるわずかな歯の動揺)

レントゲン

・歯根膜腔の拡大

・骨縁下欠損

・セメント質の肥厚 などがある場合は咬合力が強いことを疑う

 

感想

咬合力の診査をする部分がこれだけたくさんあることをしれてよかったです。 咬合力が強ければ歯が

揺らされ骨が溶けることによって歯周病が進行するリスクも高くなると思うので、炎症だけではなく

咬合力についても意識していきたいと思いました。

                                 衛生士 加藤

  2018/05/04   ふくだ歯科
タグ:歯周病