スタッフレポート

岡山大学歯学部学術セミナー

岡山大学歯学部同窓会セミナー2019に参加して

つまようじ法とは、つまようじのように歯ブラシの毛先を歯と歯の間に出し入れすることにより、

歯間部の歯肉のマッサージと歯垢除去をおこなうブラッシング方法です。つまようじ法を行うことに

より、歯周病の予防・治療や歯の歯周病予防に効果があることが示されています。

① 動揺度の改善

動揺歯を有する患者さん20人につまようじ法での術者磨きとブラッシング指導を行ったところ、初診時

に横から平均101gの力で押すと動揺し始めていた歯が、2週間後には141g、4週間後に147g、

8週間後には157gかけないと動かないくらいにしっかりしてきた。

② 口臭の改善

対象者の口にストローを入れて口臭の原因とされる揮発性硫黄化合物の濃度を測定。つまようじ法に

よる術者磨きを1人平均7回繰り返し、濃度の変化を調べました。その結果、13人の初診時の濃度は

平均で250.2ppb(1ppbは10憶分の1)でしたが、治療後には平均59.0ppbと約4分の1に

ダウン。全員がそばにいても口臭を感じない100ppb以下のレベルに下がり、中には1100ppbから

60ppb程度まで激減した例もありました。 厚生省が30歳以上の約25000人を対象に平成五年に行った

調査では、役3500人(約14%)が口臭問題を訴え、口臭に悩む人は年々増加中とのことです。 口臭の

原因は、虫歯や歯周病、消化器系などとされますが、今回の調査によって、口の中を清潔にすれば、

口臭が防げることが裏付けられ、つまようじ法を続けることで、長期的な口臭減少に繋がるものと

考えられています。

③ 歯周病を改善

つまようじ法を行うと歯肉からの出血は早く治ります。1週間で差が出るほどです。つまようじ法は、

バス法とフロスの併用による方法に比べて、臨床的にも有効であり、短時間で終わります。

《ブラッシングのマッサージ効果》

つまようじ法のマッサージ効果をイヌの歯肉を使って調べました。 イヌの歯肉の一方を毎日歯磨きし、

反対側の歯は徹底的に歯石・歯垢除去をしました。1週間後、ブラッシング側の細胞は歯石・歯垢除去

側に比べ2倍くらいたくさんの細胞が増殖していました。また、炎症性細胞の数も5週間で半分に減って

いました。このことから歯周病には歯石・歯垢除去よりもブラッシングによるマッサージが有効である

ことがわかりました。 また、つまようじ法によるブラッシングのマッサージ効果は約200gの力で10秒

から20秒行うことが一番効果が高いという結果も出ました。 (200g消しゴムで字を消すときと同じような力に相当します。)

《つまようじ法ブラッシングの気持ちよさがモチベーションに》

患者さんにつまようじ法をすると、「気持ちいい」、「いまから食事をするのがもったいないくらい」

などポジティブな感想が多くみられたそうです。 歯と歯の間に毛先を通すという感覚は非常に

インパクトが強く、驚きとともに爽快感を味わっていただけます。

◎ ブラッシングの感想

気持ちいい・・・76%

驚き・・・・・・33%

痛い・・・・・・10%

なんともない・・2%

その他・・・・・2%

《感想》

実際につまようじ法を受けた感想は、結構ガシガシされている感覚でしたが、してもらった後は

すっきりした感じはありました。家で自分でやってみましたが、なかなか難しく患者さんがセルフケア

を行うのには難しいかなと感じました。ですが爽快感があるため、それを求めまた来院してプロフェ

ッショナルケアを受けようというモチベーションに繋がるのかなと思いました。今後TBIを行う際には

参考にしていこうと思います。

                                                                                                            衛生士 藤元

  2019/10/22   ふくだ歯科

岡山大学歯学部同窓会学術セミナー2016に参加して

歯周病…全身疾患の危険要因になりうる

→動脈硬化、認知症、糖尿病、弁膜症・心内膜炎、非アルコール性肝炎(NASH)、

    低体重児出産・早産、関節リウマチ、誤嚥性肺炎

原因除去を中心とした歯周治療の展開が必要となってくる

歯周治療を行なうことによって口腔以外の指標(検査値)の改善にも寄与できる

問診票…身長・体重・血圧を記載する箇所があるとより確実→口と体は関係しているから

ライフステージと共に「口腔」と「全身」の関わりを意識する

     ex.ある患者さん…口腔内の崩壊→一日三食うどん→食べる物が限定される  

現在の状況                              歯周治療介入無し(仮定)                        歯周治療介入有り(実際)

肥満                                         肥満                                                            肥満 メタボ 二型糖尿病 メタボ

咀嚼障害(うどんのみ)         糖尿病性合併症の発症                               食生活の改善

発音障害(会話が苦手)         経済的困窮                                                  社会性の回復

審美障害(面接が苦手)                                                                              社会復帰

歯周病治療を行なうなら患者さんの健康増進とQOLの向上に貢献できる

歯周病は糖尿病の六番目の合併症?

    急性…糖尿病性昏睡

    慢性…網膜症、腎症、神経障害、大血管障害、小血管障害

現行の糖尿病治療の主な目的は「合併症の発症・悪化の予防」である

    しかし、歯周病はすでに発症しており悪影響を及ぼしている合併症なので、糖尿病と歯周病の

    悪循環のサイクルを断ち切ることは糖尿病患者さんの健康寿命の延伸に寄与できる

HbA1c値が1%下がる意義とは?

   歯周病治療はHbA1c値を平均0.4%低下させる

                       ↓その中で…

   HbA1c値は1%下がると、小血管系合併症のリスクが大幅に低減する

糖尿病患者における理想的な歯周病治療

    軽微→歯周病悪化の予防

    重度→歯周病のコントロール・口腔機能の改善

歯周組織再生治療の変遷と将来 ~塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の臨床応用に関する最新情報~

健康長寿と再生医療

    一般的に健康であると認識する指標は「食事を食べることができる」であるが、 健康寿命を損なう

    ことに挙げられるのは、一位が癌など、歯科関連は入っていない

歯周組織再生治療の歴史

   ・骨移植術…自家骨・他家骨・異種他家骨・人口材料

       ・長い上皮性付着で治癒することが多いと報告されている

       ・GTR法やEMD、PRPと併用することもある

・歯周組織再生誘導法(GTR法)

・PRP(多血小板血漿)、PRF・CGF(多血小板フィブリン)

   ・止血・創傷治癒促進・成長因子の役割

・再生医療等安全性確保法の制定…PRP、PRF・CGF使用時の手続きと規制

・エナメルマトリックスタンパクを応用した再生治療

    EMD(エナメルマトリックスデリバティブ)

    ・エムドゲインゲル(ブタ歯胚組織使用歯周組織再生用材料)

    ・エムドゲインの安全性について

        ・異種生物タンパクに対するアレルギー、ウィルスや伝達性病原体の混入

        ・感染性の観点から エムドゲイン→エムドゲインゲルへ(加熱製剤になった)

           しかし、リスクをすべて説明することは難しい

・塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)

        ・bFGFは体内の組織かに広く分布し、主に組織が損傷を受けた時、細胞外基質から遊離され、

           組織の修復再生因子として活躍するもの→歯周病治療薬への応用に期待

歯周組織再生治療のまとめ

・健康寿命の延伸の為に、健康な歯を保存することに力を注ぐ事が重要

・EMDは現在国内で承認されている歯周治療材料の中で最も高い有効性を示す

・bFGFは異種タンパクを含まない歯周治療薬でありEMDよりも高い有効性を示す可能性がある

【感想・考察】

今回、岡大セミナーの内容をレポートしていく中で、やはり健康と口腔とは大きく関連しており、

医学的にも、そして一般的に患者さんが求めている事においても歯周病治療は重要な位置と割合を

占めているように感じました。私たちが行なっている事は全身にも影響を及ぼすのだということを

心に留め、ただ漫然と日々の診療をこなすのではなく、高いモチベーションを保ちつつ患者さんに

向き合っていけたらいいなと思いました。

                                                                                                              衛生士   河本

  2017/01/15   ふくだ歯科

岡山大学歯学部学術セミナー2016に参加して

チームで取り組む最新歯周病治療

~これからの歯科医療に求められる歯科医師・歯科衛生士像とは~             高柴正吾先生

医療の目的・意義

 健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にもそして

 社会的にも、すべてが満たされた状態にあること

  →私達は死亡率100%なので、死ぬまでの間にいかに、その人らしい生活を楽しむかということ

  外来治療:①日常生活の維持 ②『健康生活』のゴール設定

  入院治療:①早く退院して日常生活に戻る ②『健康生活』のゴール設定

  QOLを維持・向上し、生きていることが幸せ!と感じること…これを目指す

医療の中での歯科の目的・意義

  口の機能管理

 ①噛むことによって食事を摂って栄養を得ること

 ②口腔内はバイ菌が多いので、口の感染と炎症から口の機能を守りつつ、それらが全身に影響を

  与えないようにすること

 歯周病治療:①感染源の除去 ②再感染の防止・予防

生涯続く細菌との共生

  人間の体…入口と出口は細菌が多い、死ぬ間際には増える

歯周病の発症と治療概念の流れ

         ①感染          ②炎症      ③組織破壊        ④機能喪失

 対策       感染源除去  消炎          形態改善            リハビリ

 現在の 歯周治療    歯垢除去     化学療法   歯周外科治療     口腔機能回復治療 (補綴:被覆・連結)

                       スケーリング(歯周基本治療)

 最近の治療            化学療法                       歯周再生療法    インプラント

 費用          小                  大

 日常での努力      大                  小

歯周病から全身疾患:歯周病内科

 心臓血管系疾患、早産・低体重児出産、呼吸器系疾患、糖尿病、末期腎疾患…

口腔が「汚い」とは?

  部屋の「汚い」は?→整理整頓することで清潔へ

 口腔も整理整頓し、衛生管理が可能な環境へ変える…年齢の能力に対応すること

個人の長寿化:人生90年

 でも、健康寿命との差は10数年

 人口の高齢化:30%を超える高齢者

歯科医療の果たす役割

  “歯の延命を図る”

  “全身の健康に寄与する”

  “社会・文化への発展へ貢献する”

口腔科としての歯周疾患の捉え方

 口腔内の感染症  神経機能の統合性の失調      発生系の異常

 歯周病 齲蝕   歯牙欠損 歯・顎・顔面痛 顎関節症   奇形 腫瘍

   リハビリテーション 再建・再生

【感想・考察】

   今回の内容から、身体の健康とお口の健康とは密接に結び付いていることが分かり、歯科が果たす

   役割の重要性を改めて認識できたように感じます。長寿化ということを考えた時に、自分自身も

   含め、患者さん一人一人の日常での努力が大きければ大きいほど、今後の口腔状態や生活様式も

   変わってくるはずです。そうであるならば、患者さんに合わせ、できることできないことを見極め

   つつも、諦めることなく、より一層口腔への意識を高め、歯を守ることの大切さを伝えていけたら

   いいなと思いました。

                                                                                                                        衛生士 河本

  2016/10/17   ふくだ歯科