スタッフレポート

2025年1月5日

「中和も味も免疫も、こんなにスゴイ唾液」について、勉強会で発表して

【唾液はどこでできるのか】

唾液は、唾液腺という臓器が作ります。約9割の唾液を出す大唾液腺は、耳下腺、顎下腺、舌下腺の

3つです。耳下腺が最も大きいですが、唾液が最も多く分泌されるのは顎下腺です。

耳下腺は漿液性唾液(サラサラ唾液)、舌下腺は粘液性唾液(ネバネバ唾液)、顎下腺は両方を分泌

します。漿液性唾液は水分が多い唾液です。消化の促進を促したり、細菌や食べ物を洗い流したり、

食べ物を胃腸に運んだりします。粘液性唾液はタンパク成分が多い唾液です。粘膜の保湿・保護を

したり、細菌を絡め取り体内への侵入を防いだりなど、身体を守るために様々な働きをします。

唾液の分泌には自律神経が関係しており、交感神経が優位なとき(心と体が興奮モード)には粘液性

唾液、副交感神経(お休みモード)は漿液性唾液が分泌されます。しかし、生活の中では両方の唾液が

分泌され、混合唾液として口の中を潤しています。刺激に反応して大量に分泌する唾液を、刺激唾液と

いいます。特に食事時の咀嚼による刺激は刺激唾液の分泌を増大させます。一方で、咀嚼などの刺激が

なくても自然に流れ出る唾液を、安静時唾液といいます。口腔粘膜には無数の小唾液腺が存在し、唾液

を産生しています。存在する部位によって口唇腺、口蓋腺、頬腺、臼後腺、舌口蓋腺、舌腺と呼ばれて

います。無数にあるため、粘膜を隙間なくカバーしているのです。

【唾液の出口はどこなのか】

耳下腺で作られた唾液は耳下腺乳頭から分泌され、口腔内に広がります。顎下腺と舌下腺からの唾液は

舌の根元の舌下小丘から下顎前歯部に向けて噴射されます。唾液が最も多く届くのは下顎前歯部な

ので、下顎前歯部舌側はう蝕になりにくい部位なのです。一方で、唾液が届きにくい部位もあります。

例えば、口腔前庭(口唇粘膜及び頬粘膜と歯列に挟まれた空間)です。しかし、口腔前庭を潤している

のは耳下腺乳頭から分泌された唾液です。耳下腺から分泌される唾液は漿液性唾液なので、口腔前庭

全体が潤されます。歯石がよく見られやすい場所は、唾液が届きやすく停滞しやすい部位です。歯石は

プラークが唾液中のカルシウムなどの成分によって石灰化してできるものです。上顎7番頬側は、

歯ブラシが届きにくい場所、唾液の出口である耳下腺乳頭の近くで歯石が見られやすいです。顎下腺と

舌下腺の唾液の出口である舌下小丘に近い下顎前歯舌側にも、よく歯石が付着しています。一方、

上顎前歯唇側は小児でもう蝕の好発部位。それは、唾液が届きにくい部位だからです。また、口唇閉鎖

不全症(ポカン口)なら尚更、唾液は届きにくくなります。

【年を取ると唾液は減る?】

成人の一般的な1日の唾液分泌量は、約1.5ℓといわれています(小児は500㎖)。加齢により刺激唾液は

大きく減少しませんが、安静時唾液は減少します。加齢以外でも、薬物やホルモンなど様々な要因で

40歳以降から唾液は減少傾向にある人が多いです。個人差も大きいです。

【食べ物が飲み込めるのは唾液のおかげ】

唾液の99.5%は水分です。硬いものを噛み砕いて先が尖っていても、口腔内に刺さることはなく、痛み

も感じないのは、唾液の水分で粘膜が濡れているからなのです。また、パサパサした食べ物が喉に張り

付かず、飲み込みやすいのも、唾液中の水分が泥状にしてまとめているからなのです。お年寄りが

食べ物をのどに詰まらせるのは、嚥下の能力低下と、唾液の分泌量の減少により、食べ物が唾液で

コーティングされていないからです。しっかり咀嚼することで、咀嚼-唾液反射による唾液が分泌される

ので、高齢者には咀嚼の指導をするとよいでしょう。

【口の中が掃除されるのも、唾液のおかげ】

唾液量は多い方がいいのは、唾液が口腔内を洗い流す作用に関わるからです。この作用のことを自浄

作用(洗浄作用)といいます。自浄作用は、唾液を飲み込むときにはたらきます。嚥下をするときれい

な唾液がまた分泌され、汚れた唾液は食道に飲み込まれます。人間は1分間に2回唾液を飲み込んでいる

ので、毎日相当数の洗浄が行われています。朝、口がネバネバするのは、夜中に唾液が大量に減り、

唾液の量が激減した結果、自浄作用が停滞し、細菌が増えて口腔内が汚れた証拠です。

【味を感じられるのも、唾液のおかげ】

舌の表面のザラザラした突起は、舌乳頭といいます。舌乳頭は4種類あり、舌上部には全面を覆うように

糸状乳頭、所々に茸状乳頭があります。舌の両脇には葉状乳頭があり、咽頭近くには有郭乳頭があり

ます。糸状乳頭を除く3つの乳頭には味蕾という器官があり、ここで味を感じます。味蕾は舌だけでは

なく、軟口蓋、咽頭、喉頭蓋、頬にもあります。しかし、味蕾に食べ物が触れただけでは味は感じま

せん。味物質が唾液に溶けて初めて味蕾に運ばれます。つまり、水溶性のものしか味は感じません。

また、味蕾の周りはいつも唾液が分泌されており、水に溶けた物質をすぐに洗い流します。腐敗して

いるような危険なものを食べないよう、唾液が次々と味物質を洗い流すことで、新しく口に入ったもの

が安全かそうでないかを判断することができているわけです。

 

【感想】

唾液の基礎知識や唾液の効果について、再度復習することができました。唾液量が少なくて食事中に

よくむせる患者さん、誤嚥の可能性がある患者さんには唾液腺マッサージや舌回し、水分摂取を積極的

に指導していきたいと思いました。また、歯石が付着しやすい部位について再確認することができ

ました。SRP時は、上顎7頬側近心部や下顎前歯部舌側に気にかけながら、スケーリングをしていき

たいと思います。

                       衛生士 小鐵 

  2025/01/05   ふくだ歯科
タグ:唾液