スタッフレポート

2022年12月

「歯周病の予測」について、勉強会で発表して

Ⅰ.歯周病の危険因子について

 歯周病の原因は

 ①歯周病菌、歯石やプラーク、外傷性咬合といった病的因子 

 ②免疫や組織抵抗力といった遺伝、ストレス、口腔解剖学的形態といった宿主的因子 

 ③生活習慣、教育や文化、経済や医療、保健といった環境的因子

 の3つがあります。

 これらは、歯周病の発症・進行に関係があると考えられる因子で、リスクファクター(危険因子)

 と呼ばれています。しかし、リスクファクターがあるから必ず、歯周病になるというわけでは

 ありません。ただ、発症や進行の可能性は増加します。

Ⅱ.病原性の高い歯周病について

 患者さんのバイオフィルムに、病原性の高い歯周病菌がいるか、いないかは、とても重要です。

 レッドコンプレックスは病原性が高く、大きな危険因子です。なかでも、Ⅱ型のP.gingivalisは、

 高病原性の細菌です。これに感染すると、非感染者と比べて44.44倍も歯周炎が発症する危険性が

 高くなります。歯周病のリスク因子として有名な喫煙や糖尿病と比べ、かなり高い値です。 対策方法

 として、細菌検査や臨床症状からリスク判断ができます。もし、細菌検査が可能であれば、十分な

 ブラッシングや定期的プロフェッショナルケアなどの歯周病予防対策を早めにスタートすることが

 できます。もし、細菌検査ができないのであれば、治療効果の推移と合わせて、歯周病の病原性を

 推測することができます。歯周治療方針を決めるうえで、とても大切なことです。

Ⅲ.歯周病の発症・進行への影響について

 世の中には、歯周病になりやすい体質の人と、そうでない人がいます。これは、遺伝的要因によって

 異なってきますが、そのメカニズムははっきりとは分かっていません。ストレスや不健康、妬みや

 恨みなどの悪い感情は免疫力や抵抗力を弱めます。生活習慣も重要です。 生活環境は、毎日患者さん

 と共にあり、歯周病の発症・進行に大きな影響を与えます。患者さんのことをよく知り、生活作り

 から、一生涯に渡って続く、歯周病のメンテナンスが始まります。良い生活習慣を保てないことは、

 歯周病の危険因子といえます。 望ましい健康生活とは、健康的に食べて、動いて、寝ることです。

 お酒は控えめで、タバコとストレスは百害あって一利なしです。口腔の健康習慣は、歯肉縁・歯間部

 の清掃と定期的歯科受診です。よく噛むこと、硬いものを食べること、カルシウムを取ることも

 歯周病予防に効果的と言われていますが、科学的根拠はありません。

Ⅳ.代表的な危険因子について

 歯周病は中年以降が圧倒的に多く、年齢と共に発症リスクがUPします。また、女性より男性の方が、

 飲酒や喫煙などの生活習慣や性格の面から考えて、高リスクであることが多いです。 危険因子の代表

 は、肥満、喫煙、飲酒です。BMIが22前後の人と比べて、25以上の人のリスクは約3倍、BMI30以上

 では約9倍となります。また、糖尿病が発症するとリスクは3~11倍となります。受動喫煙もリスクが

 あり、非喫煙者よりも喫煙者は5倍、受動喫煙者は3倍です。毎日、大瓶ビール1本程度を飲み続ける

 と、リスクは約3倍となります。また、飲酒する人の中で、顔が赤くなるか、赤くならないかでも

 リスクが異なります。赤くなる人は、33ml以上のアルコールを毎日飲むと、4.28倍リスクが高く

 なります。飲酒で顔が赤くなる人には、飲酒を控えるように伝える必要があります。

Ⅴ.歯科衛生士のミッションについて

 患者さんは、いろんな危険因子に囲まれて毎日を過ごしています。歯周病の発症を患者さんの人生を

 通して予防することが理想です。どんな重要な歯周炎でも必ず始まりがあります。その時を

 見逃さない目をもって、早期発見・早期治療をする。日常から支えていくことが歯科衛生士の使命に

 なります。

Ⅵ.感想

 患者さんの体のタイプや生活環境から、患者さんの口腔内も出来上がっているので、問診でいろんな

 情報収集をすることが、とても大切であると感じました。また、口腔内所見からはもちろんですが、

 普段の何気ない会話から、患者さんの変化が分かることもあります。なので、定期メンテナンスに

 通ってくださっている患者さんの変化に早く気づいて、歯周病の進行を遅らせていくことができる

 のは、歯科衛生士の腕の見せ所であると思いました。 自分もそういった目で日頃、過ごしていける

 よう今後も頑張ります。

                     衛生士 福田

  2022/12/04   ふくだ歯科
タグ:歯周病