スタッフレポート

2019年7月

「認知症患者さんを不安にさせない対応をマニチュードに学ぶ」について、勉強会で発表して

「ユマニチュード」は、ケア提供者の振る舞いによって、患者さんに“やさしさ”というメッセージを

伝えるコミュニケーション技術。

 

ユマニチュードの基本技法

 ユマニチュードは150を越える細かな実践技術からなっている。もっとも基本的な技法  として、

 “4つの柱”があり、➀見つめる、②話しかける、③触れる、④立つことの支援  から成る。

 歯科の場合に特に活用できる➀から③について紹介する。

 

見る   

 笑顔を見せ、ゆっくりと正面から近づくことがポイント。できるだけ、相手と同じ 視線の高さになる

 ように姿勢を低くして話しかける。   

 注意があちこち分散する人の場合には、しっかり目をみつめて視線を捉えることで、話しかける人に

 注意を集中してもらうことができる。

 

話す   

 話しかけるときには、穏やかなトーンで、ポジティブな言葉を使うように心がける。   

 “痛い”という言葉はネガティブな発想を抱かせるので、痛みについてどうしても 、聞かなければ

 ならないときだけ、その言葉を使うような配慮が必要。

触れる   

 触覚からの情報が、嫌なイメージを抱きやすいものである場合、安心できるイメージ につながる

 よう、やさしく触れる部分を作る必要がある。特に、言語力が低下した 状態の人に対しては、触覚

 からの情報は私たちよりも強力。   

 肩に触れる時、慣れていないので軽くポンポンと触れがちだが、安心をもたらす 触れ方としては、

 腕一本分の重みをかけて、相手の肩にしっかりと触れるようにする と効果的。

 

ユマニチュードをどう使う? 歯科医院の4大“困った”場面

場面1・予約したと勘違いして来院し、怒り出してしまう  

 *予約がないことを伝えるとき、姿勢を低くしながらゆっくり近づき、笑顔で相手の 目をみながら、

  ポジティブな言葉から会話をスタートする。  

 *一緒に過ごす時間を十分確保したいから協力してほしいというニュアンスを込めて、アポイントの

  あいている日をいくつか提案し、都合を聞いてみる。

場面2・ブラッシング指導で機嫌を損ねてしまう  

 *認知症が進んでいる場合は、しっかりと目を合わせて笑顔を見せ、会えて喜んでいる ことを表現

  する。  

 *できていないことを言語化され続けると、イライラするので、“できていること”を 強調する。

場面3・何度も同じ話や訴えを繰り返し、口を開けてくれない  

 *同じ訴えを繰り返すときには、なんらかの不安を抱えていることが多いので、最初の アプローチで

  安心してもらうことが大切。誘導の際、肩に手を添えるなど。    

 *治療用の器具を持つ前に、マスクを下げて笑顔を見せ、ポジティブな言葉をかける。

  デンタルチェアを倒した状態で声をかけるときには、少しまわりこんで、正面から 声をかけるなど

  の配慮をする。 

場面4・診療途中で「もう帰ります」とチェアから降りようとする  

 *話しかける、時折肩に手を触れるなどして、疑問や不安を解くことが必要。   

  限られた視覚情報をリクライニングを起こし、回復させ不安を軽減させる。  

 *記憶障害、見当識障害などによって、自分の状況が理解できなくなっている可能性が あるので、

  できるだけ、顔をのぞき込み、笑顔をみせ、現在の状況を伝え、ポジティ ブな言葉を添える。

 

 おわりに   

 認知症の人が混乱してしまった時、ユマニチュードでも、対応は難しく、相手が強く 嫌がる時、3分

 以上がんばってアプローチしても受け入れてもらえない時には、いっ たん退くというルール(3分

 ルール)がある。時間をあけることが、相手の意思を尊重することになる。“いったんあきらめる”

 ことも大切な技術だそうです。 認知症の患者さんに限らず、ユマニチュードの技法を活用していける

 ようにしていけたらと思いました。                         

                            衛生士 赤木

  2019/07/31   ふくだ歯科
タグ:認知症

平成30年度 歯科医療安全研修会に参加して

「歯科における感染対策とマニュアルについて」

歯科領域における医療安全

◆標準予防策の実施

◆抗体価検査・予防接種(医療従事者、研修生、学生など) 

 B型肝炎、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎、インフルエンザ

◆針刺し、切創対策

  針捨てBOXを設置、安全装置付き機材を使用、危険物の分別を徹底

◆院内感染防止マニュアルの作成、定期的に見直し改定

◆スタッフへの研修会を実施

 

感染対策の不備による経営への影響

1.保健所の立ち入り検査、改善指導

 ◇院内感染対策指針・マニュアルの確認

 ◇整備されていない場合

  新規開業時は開設が認められないケースあり

  作成するように指導を受ける

2.医療事故・訴訟のリスク

 ◇院内感染発生時は診療所の評判を落とすことにつながることがあり、 感染した患者が診療所に

  対して、損害賠償を求める医療訴訟も増加している

 ◇スタッフの安全を脅かす(スタッフからの医療訴訟)

  スタッフの定着率の低下

 

感染対策の基本

 標準予防策(Standard Precaution)スタンダード プリコーション

 すべての人の湿性生体物質(血液・体液・汗を除く分泌物・排泄物・唾液・創傷のある皮膚・粘膜)

 は、病原体を含んでいる可能性があり常に感染の可能性がある

 

問診表の感染症情報は正しいのか?

・多くの患者は感染症を持っているのか知らない

・HIVの場合、申告しない患者が多い

・我が国では、C型肝炎やHIV、梅毒が増加している

 

標準予防策の遵守

 手指衛生の徹底…適切なタイミングで適切な方法

 →アルコール手指消毒、石けんによる手洗い

 適切な防護具の着脱…曝露のリスクに対する防護具の選択と適切な着脱

  →エプロン・ガウン、手袋、マスク、ゴーグル

  *目は粘膜なので感染のリスク多

 

手指衛生(手指消毒・手洗い)

*手に目で見て汚れがない場合…擦式消毒用アルコール製剤で手指消毒

*手に汚れがある場合…流水と石けんで手洗い

 ・手洗いより、手指消毒の方が滅菌効果が高い

 ・手洗いより、手指消毒の方が手に優しい…保湿成分あり

 ・手洗いより、手指消毒の方がアクセスが良い

 手指消毒…どこでも使える、洗い場まで行かなくて良い

 

手指衛生のタイミング

◇治療の前後

◇手袋を着用する前と手袋を外した後

◇歯科治療室や歯科技工室から離れる前

◇汚染された可能性のある環境表面や機器に触れた後

◇勤務に就く時、帰宅する時

◇食事やトイレの前後など

*迷ったら、手指衛生を行う習慣をつける

 →自分の手が不潔か清潔か考える…自分だけが安全ではいけない

   触ったところは全て不潔となってしまう

 

針刺し・切創予防策

  針刺しによる感染率

 HBV > HCV > HIV

  1~62%   1.8%    0.3%

 血中ウィルス感染症の感染経路

 ・経皮的曝露=針刺し切創事故

 ・経粘膜的曝露=眼粘膜、口腔粘膜など

 ・既存の創傷部位への曝露=あかぎれ、かさむけ

  リキャップに関連する事例

 ・リキャップ時に的が外れて刺傷

 ・リキャップ時に針がキャップを突き抜けて刺傷

 ・リキャップ後キャップが外れてしまい刺傷

 

歯科医院での針刺し・切創事例

 歯科医師の84%、コ・デンタルの72%が針刺し切創を経験

 歯科医師…診療時間中の針刺し切創が多く、器具使用中や交換時に多い

  コ・デンタル…診療時間後も多く片付け、器財洗浄・消毒時に発生

 世界的に歯科医師のB型肝炎発生率は「一般集団」より高く、米国6倍、ドイツ4倍、日本2.5倍と

 有意に高い。

 医療従事者の中でも歯科医師のHBV感染が最も多い。

 

発生後の対応

◆HBV(+)

 HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を48時間以内に注射。

 体内に侵入したHBウィルスをHBIGで中和排除することによりHBウィルス 感染を予防できる。

 HBsワクチンを事故直後~7日以内、1か月後、6か月後の3回投与。

◆HCV(+)

 専門医と相談。インターフェロンは推奨しない。抗ウィルス剤の内服投与。

 (一日約73,000円:8週間)

◆HIV(+)

 3剤併用による抗HIV療法、感染予防にも4週間行なう。

 針刺し切創後、1時間以内、遅くとも2時間以内に開始する。

◆梅毒トレポネーマ(+)

 ペニシリン系抗生剤の内服投与

 

滅菌法の概念

 無菌→生育可能な微生物が存在しない状態

 滅菌→微生物を殺滅し無菌状態とするプロセス

 

滅菌物の管理方法(保管・取り扱い)

・埃の多いところ(電気製品周り)、水周りを避ける

・滅菌バッグを破損させるような取り扱いをしない

 (折れ曲げる、輪ゴムでまとめる)

・バッグごとでも落としたら不潔

・濡れた(汗も)手で触らない

・濡れた痕跡のあるものは不潔物

・バッグにマジックインクなどで書かない…不潔になってしまうから

 (滅菌前にシール欄外のフィルム面に記入)

 

滅菌器使用の原則

・滅菌する器材は十分洗浄する

・器材を十分乾燥させる(濡れている器材は滅菌できない)

・積載量はチャンバーの70%以内

・滅菌物を積み重ねない

・滅菌バッグはフィルム面を上に

・乾燥不良は再滅菌が必要

 乾燥不良の原因→過積載、乾燥時間が短いなど

 

酸性水 (強/弱酸性水・電解水・イオン水・アクア水・機能水)

・環境消毒、器具消毒、創部・口腔内の消毒 

 低濃度の塩素による消毒法

 有機物が残存していると消毒効果は期待できない

 塩素濃度が低下するため保管できない 

 

【感想・考察】

今回の研修会・レポートを通して、普段何気なく行なっている手指消毒や滅菌について改めて考える

良い機会となったと思います。手指消毒のタイミングや滅菌物の取り扱いなどは特に勉強になり

ました。自分が今、不潔なのか清潔なのかというところを何気なくではなく、より意識して行なって

いく必要があると感じました。また、針刺しなどからの感染の危険も十分に考え、毎日の診療を、

慣れた作業ではなく、危機管理意識を持って取り組んでいきたいと思います。

                            衛生士   河本

  2019/07/24   ふくだ歯科

コミュニケーション術について、勉強会で発表して

《 患者さんの心を動かせるようになれば一人前 》

 歯周病は生活習慣病の色合いの強い疾患なため患者さん自身の日々の管理が最も大切な要因になり

 ます。 初対面の患者さんはかなり緊張していますし、相手がどんな人か探りを入れながら会話をする 

 ことになります。いきなりブラッシングの話をしてもテクニックを伝えるだけになってしまいます。

  そんな時、ひとことふたこと治療とは関係のない話や共通の話題などを間に挟むだけで、患者さんの

 緊張を解きほぐすのに効果的なことがあります。 また、以前から定期検診に来られている患者さん

 に、初めて担当が回っていたときには案外大きな落とし穴があります。 患者さんは治療には慣れて

 いますが、新しい歯科衛生士さんには慣れていません。こんな時にいきなり「プラークがたくさん

 残っていますよ!」というような患者さんを説教することから話始めると患者さんは心の扉を閉ざし

 てしまいます。最初に心を閉ざしてしまった患者さんの扉を開けることは容易ではありません。

 プラークコントロールはいつもと同じかもしれませんし、前回はもっとひどかったのに今回はその人

 なりに頑張ってきたのかもしれません。我々はどうしても自分の物差しで他人を評価してしまいがち

 ですが、プラークコントロールは患者さんのペースやレベルに合わせる余裕が必要です。

 

《習慣変容までの道のり》

  人の習慣を変えることはかなり難しいことです。 モチベーションのゴールはブラッシングのテク

 ニックを身につけることではなく、そのテクニックを含めてブラッシングという習慣が生活習慣の

 一部になることです。 歯科衛生士に言われて習慣が変わらないのは、まずその必要性や重要性に気づ

 いていないからです。つまり考え方が変わっていないわけです。このように習慣を変えるためには

 考え方が変わり、行動が変わり、その行動に満足してはじめて習慣が定着していきます。

 

《ポジティブアプローチ》

 「これをするとこのように健康になる。」というアプローチの仕方で患者さんの健康志向が生まれる

 と効果は長続きします。 また一度にたくさんのことを教えても結局何も伝わっていないことがあり

 ます。ポイントを絞って指導するようにすれば、成果もわかりやすく、次の指導に繋がります。 同じ

 内容のことを伝える場合でも、使う言葉によって伝わり方はずいぶん変わります。例えば、「磨き

 すぎです」を「がんばりすぎです」に変えるだけで、よくしようとしているのが裏目に出ていると

 いう、少しプラスのイメージに繋がります。 「ここにプラークがたくさん残っていますよ」ではなく

 「ここのブラッシングが苦手なようですね。」に変えるだけで患者さんの受け取り方も変わってくる

 はずです。このように『使う言葉を選ぶ』ことは、想像以上にコミュニケーションに影響するの

 です。

 

《感想》

 今まで実習生として患者さんに関わってきたけれど、働き始めて、改めて 歯科衛生士のコミュニケー

 ション力の重要さに気づきました。言葉選びや言葉の伝え方ひとつひとつ大切なので、患者さんに

 不快感を与えないようにしていきたいと思います。 また患者さんに伝えられることができるのはもち

 ろんのこと、患者さんに寄り添って聴き上手になれるように知識を増やしたいと思います。

                          衛生士 藤元

  2019/07/14   ふくだ歯科