スタッフレポート

2019年5月12日

「さまざまな原因で起こる歯に痛み」について、勉強会で発表して

非歯原性歯痛

非歯原性歯痛の原因は、8種類に分類されている。(日本口腔顔面痛学会のガイドライン)

非歯原性歯痛とは、歯や歯周組織に異常が見られないにも関わらず、歯に痛みを感じる状態をいう。

歯の痛みを訴えて受診した人の約3%が、非歯原性歯痛だといわれている。

 

①筋・筋膜性歯痛

    筋・筋膜性歯痛は、食べ物をかむときに使う筋肉(咀嚼筋)や首の筋肉と、これらの筋肉を覆う筋膜

 の痛みが原因で起こる関連痛。関連痛とは、痛みの原因から離れた場所が痛くなることをいう。

②神経障害性歯痛

 神経障害性歯痛は、神経障害性の疼痛が原因で起こる歯の痛みで、主に2つのタイプに分けられる。

  発作性…三叉神経の痛みが原因で起こる激痛。

  持続性…代表的な原因として帯状疱疹や帯状疱疹の後遺症による神経痛。

  神経周囲の炎症や腫瘍、骨折によって神経が障害されることが原因となる場合もある。

③神経血管性歯痛

 頭痛の関連痛として起こる歯の痛み。

④上顎洞性歯痛

 上顎の骨の中にある副鼻腔の空洞に、炎症や腫瘍があって起こる関連痛。

⑤心臓性歯痛

 狭心症や心筋梗塞、心膜炎などの心臓の病気が原因で起こる関連痛。

⑥精神疾患または心理社会的要因による歯痛

 不安や気分が落ち込む抑うつといった心理社会的要因が背景にあって起こる歯の痛み。

⑦特発性歯痛

 さまざまな検査をしても原因がわからない歯の痛み。

⑧そのほかのさまざまな疾患により生じる歯痛

 巨細胞性動脈炎や悪性リンパ腫、肺がんなど、病気が原因で起こる歯の痛み。

 

非歯原性歯痛の検査と診断

 非歯原性歯痛の診断をするには、まず、虫歯や歯周病などの問題がないかを、問診や視診、エックス

 線検査などで調べる。歯や歯周組織に問題がない場合は、8つの原因にあてはまる症状がないか、

 詳しい問診や触診、場合によってはCTやMRIなどの検査をして鑑別。

非歯原性歯痛~筋・筋膜性歯痛の治療~

 一般の歯科で治療できる「筋・筋膜性歯痛」

 筋・筋膜性歯痛

  非歯原性歯痛の8つの原因の中で、一般の歯科で治療が可能なのは「筋・筋膜性歯痛」の場合。

  これは、側頭筋や咬筋など、ものをかむそしゃく筋や、首の筋肉、さらに、その筋膜の痛みが原因

  で起こる関連痛。そのほかの原因の場合は、各分野の専門知識が必要となるため、一般の歯科から

  大学病院の歯科口腔外科や各分野の専門医を紹介することが多い。

  筋・筋膜性歯痛の治療

  病気について正しく理解

   筋・筋膜性歯痛の多くは、ストレスや歯を食いしばるなど、筋肉の緊張状態が原因。

   病気についての正しい理解が治療の第一歩である。

  悪い習慣の自覚と改善

   ストレスや緊張状態を生み出す日常生活の悪い習慣を自覚することも大切。歯ぎしりや食い

   しばり、上下の歯をずっとくっつけている、頬の内側をかむ、硬いものやガムを長時間かむ

   など、無意識に行っているくせなどは、意識して直していく必要がある。最近は、長時間同じ

   姿勢でパソコン作業をしていることが原因で筋・筋膜性歯痛になる患者さんが多い。時間を

   決めて休憩をとったり深呼吸するなどして、緊張をやわらげる工夫をする。うつ伏せであごを

   つけて寝る姿勢も、あごや筋肉に負担がかかるため、控えるべき。

  薬による治療 

   痛みを抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬などの鎮痛薬を使ったり補助的に筋弛緩薬を使う

   こともある。また、トリガーポイントに局所麻酔薬や炎症を抑えるためのステロイドを注射する

   こともある。

   理学療法

   痛みの軽減には、理学療法も効果が期待できる。痛みがある部分の筋肉に、ホットパックを

   使って温めて血流を良くしたり、指で軽くもみほぐしたりする。予防的に、口を開けたり閉じ

   たりを繰り返すストレッチなども効果的だが、痛みが強い場合は無理に行なわない。

 

【感想・考察】  

 齲蝕など歯が直接の原因ではない歯の痛みを抱えて来院される患者さんは最近、とみに増えてきて

 いるように感じます。私としては、関連痛か咬合性外傷くらいしか思いつきませんでしたが、今回の

 レポートで様々な原因がある事に驚くと共に大変勉強になりました。 痛みもただ一つだけとは

 限らず、複合的なものもあると考えられますので、患者さんに寄り添いつつ、状況をしっかりと

 お尋ねしていけたらいいなと思いました。

                         衛生士  河本

  2019/05/12   ふくだ歯科
タグ:歯の痛み