「職業感染の観点から見た血液媒介性感染症の知識と予防策」
―はじめに-
医療従事者には、患者などから感染を受けるリスクと自らが感染源となりうるリスクがある。一般に
血液媒介する病原体は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス
(HCV)が知られている。
感染源には血液以外に体液や生体組織があり、医療職業上の感染伝播経路として、針刺し、創傷面への
暴露、粘膜への暴露が問題となる。
1. スタンダードプリコーション
標準予防策=「すべての患者の血液・体液(汗を除く)、分泌物、排泄物、粘膜、損傷した皮膚には
感染の可能性がある」とみなし、患者や医療従事者による感染を予防するための予防
策のこと
<よく問題となる感染症>
◎ 接触感染(経口感染も含む)
・ 感染性胃腸炎(ノロウイルス、腸管出血性大腸菌等)
・ メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
◎ 飛沫感染
・ インフルエンザ
◎ 空気感染
・ 結核
◎ 血液を介した感染(血液媒介性感染症)
・ B型肝炎ウイルス
・ C型肝炎ウイルス
・ HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
2. 肝臓の病気について
◎ A型肝炎
・ 経口感染
・ 潜伏期間:2~6週間
・ 発熱、吐き気、食欲不振、黄疸
◎ B型肝炎
血液・性行為→70~80%が症状なく治る(残り20~30%も多くは急性期を経て治る)
母子感染→80%がキャリア化→10%慢性化
◎ C型肝炎
輸血・血液製剤→(75%)キャリア→C型慢性肝炎→(40%)肝硬変→肝がん
3. HIV/AIDSの臨床
◎ 後天性免疫不全症候群(AIDS)
病原体:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
伝播様式:HIV感染者との性的接触、血液感染、母子感染
治療、予防:抗HIV療法
妊娠時の抗HIV薬服用による母子感染予防
針刺し事故後の抗HIV薬服用による感染予防
◎ HIVの性質と感染経路
※感染力は弱く日常の集団生活では感染しない
<体液> 血液、精液、膣分泌物、母乳
↓
傷口や粘膜から侵入
<感染経路> ① 性的接触 ② 血液 ③ 母子感染
◎ よく見られる口腔症状
・ 口腔カンジダ症、口腔乾燥症
・ エイズ指標悪性腫瘍の代表:カポジ肉腫
4. 血液暴露後の対応
医療現場でのHIV暴露事故は現在も発生するが、適切な事故後の予防内服の実施(2時間以内、
72時間以内)により暴露後HIV感染事例の報告は一度もない
◎ 針刺し、切創防止対策
リキャップ禁止・針は使用後直ちに廃棄ボックスに入れる
廃棄ボックスは8~9割程度で交換
◎ HIV暴露事故後の対応
・ 針刺しや鋭利な刃物で皮膚を受傷した場合
→石鹸などを用いて流水で傷口を洗う。※傷口を吸ったりこすったりしてはいけない
・ 傷のない皮膚への飛散の場合
→流水でその部位を洗う
・ 眼への飛散の場合
→コンタクトをしている場合には洗う前に必ず外す
石鹸は使わず、速やかに水か食塩水で洗う
<感想>
歯科医療安全研修会に参加して、感染対策について学ぶことができました。感染症にかかっている患者
さん全員が問診票に記入をしているとは限らず、患者さん本人も感染症にかかっていることに気付いて
いない場合もあるので感染予防策をしっかりとしていきたいと思いました。器具の消毒、滅菌なども
きちんと行っていきたいです。
衛生士 松本