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糖尿病と歯科治療について

糖尿病患者は年々増加傾向にあり、成人の4人に1人以上が糖尿病かその予備群である。

歯科治療において、糖尿病患者を診察する機会も増加しつつある。

糖尿病…インスリンの不足・円滑に作用しない

→ブドウ糖が細胞に取り込まれない

=血液中のブドウ糖がエネルギー源として有効利用できない

→血糖値が上昇

→全身のエネルギーが不足する。

 

.糖尿病の病型分類

1)1型糖尿病

膵臓のβ細胞(インスリンを作る細胞)が破壊され、からだの中のインスリンの量が絶対的に足りなくなって起こる。子供の頃の始まることが多い。

治療はインスリン注射。

2)2型糖尿病

一般的に知られている糖尿病。「インスリンの量が少なくなって起こるもの」と「肝臓や筋肉などの細胞がインスリン作用をあまり感じない(インスリンの働きが悪い)ためにブドウ糖がうまく取り入れなくなって起こるもの」がある。生活習慣が関係。日本の糖尿病の95%がこのタイプ。治療はライフスタイルの改善、肥満の解消。それで不十分な場合に、薬物療法が追加。

3)遺伝子の異常やほかの病気が原因となるもの

遺伝子の異常や肝臓や膵臓の病気、感染症、免疫の異常などの他の病気が原因となって、引き起こされるもの。薬剤が原因となる場合もある。

4)妊娠糖尿病

妊娠中に発見された糖尿病。新生児に合併症が出る場合もある。

 

.糖尿病の診断

高血糖が慢性に持続していることを証明することによって行う。

◆血糖値(空腹時血糖値126mg/dL以上、75g糖負荷試験(OGTT)で2時間値200mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上のうちいずれかが糖尿病型)とHbA1c値6.5%以上(NGSP)〔6.1%以上(JDS)〕が確認された場合には「糖尿病」と診断される。

◆血糖値のみ糖尿病型と診断され、糖尿病の典型的症状や確実な糖尿病網膜症のいずれかが見られれば「糖尿病」と診断される。

◆初回検査でHbA1c値6.5%以上(NGSP)〔6.1%以上(JDS)〕のみ糖尿病型と診断され、再検査で再度糖尿病型と診断されても、血糖値が糖尿病型でなければあくまで「糖尿病の疑い」にとどまるとされる。

 

治療の目標

・糖尿病症状を除く

・合併症とその発症・増悪を防ぐ

・健康な人と変わらないQOLの維持・寿命の全う

 

.糖尿病の症状

高血糖値…口渇、多飲、多尿などの明白な典型的症状

血糖コントロールの悪化状態が続けば合併症が出現。

 

1)1型糖尿病

若年者に多い。

急性に口渇、多飲、多尿などの症状が起こる。

膵臓のランゲルハンス島(膵島)がこわされ、自分でインスリンが作れない。

インスリン治療が必要。

ゆっくり発症する場合と極めて急激に発症する場合とがある。

 

2)2型糖尿病

中高年に多い。

肥満や生活習慣病のためインスリンの働きが悪く、十分にインスリンが作れない。

症状が急性に起こることは少なく自覚症状が乏しい。

診断されても発症して何年も経過し、血糖コントロールが悪化しているため、経口血糖降下薬が必要。

 

糖尿病の症状

血糖値が高くなり現れる症状

・全身の倦怠感(だるさ) ・疲れやすい ・異常な喉の渇き(口渇)

・尿の量が多い(多尿) ・尿の回数が多い(頻尿) ・多く食べ過ぎる(多食)

 

糖尿病の合併症(余病)による症状

・視力低下 ・知覚異常 ・神経痛 ・皮膚のかゆみ 

・めまい ・陰部のかゆみ ・立ちくらみ

 

.糖尿病患者の合併症

1)急性合併症

高度のインスリン作用不足は、糖尿病ケトアシドーシス(脂肪の代謝が進む→ケトン体が過剰に蓄積→体が酸性(アシドーシス)に傾く→ケトン体によるアシドーシス=ケトアシドーシス〕や、高浸透圧高血糖症候群により意識障害をきたし、重度の場合には昏睡に陥る。低血糖による意識障害も重要。

2)慢性合併症

高血糖が長く続くと、特徴的な細小血管症である網膜症、腎症、神経障害や、糖尿病に罹患することでリスクが高くなる大血管症である動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患)、足病変、歯周病の合併症がある。

 

糖尿病と歯周病の因果関係

歯周病は腎症、網膜症、神経障害、大血管障害、小血管障害に次ぐ6番目の合併症。

歯周病のある糖尿病患者が発症する場合のある症状

・歯周組織の微少血管障害

・歯周結合組織の代謝の異常

・免疫機能の低下や唾液の減少

・口腔乾燥

重度の歯周病は、糖尿病患者における虚血性心疾患や糖尿病腎症による死亡の予知因子であることや糖尿病患者に対し、歯周病の治療・管理を行うことにより、血糖コントロールが改善したとの報告もあり、相互に与える影響が大きく、密接な関係があることが明らかになってきている。

 

.歯科治療の際の注意

1)経口血糖降下薬やインスリンを使用している場合は、低血糖が起こらないように食事時の診察を避ける必要がある。

2)特に低血糖を起こしやすい場合は一回の治療時間が長くならないようにする。

3)抜歯においても糖尿病患者では創傷治癒の遅延が指摘されている。抜歯時は普段診てもらっている医師に糖尿病の状態を確かめておく必要がある。血糖コントロールの指標は明確でないが、相対的に外科的侵襲度の低い歯周外科治療では、術前HbA1c(NGSP)7.0%未満が参考になるとの記載もある。

4)健康者では抜歯の後に抗生物質を服用する必要がないこともあるが、糖尿病患者は易感染性のため抗生物質を服用して感染を予防する必要がある。

5)糖尿病患者では、健常人と同様にアドレナリン含有歯科局所麻酔薬の使用により一過性に血糖値が上昇するものと考えられるが、その安全性について高いレベルでエビデンスを得ることはできない。しかし、内科的に良好なコントロールをされている糖尿病患者では概ね安全に使用することができると考えられる。なお未治療あるいはコントロール不良の糖尿病患者については、まず内科へのコントロール依頼を行うことが推奨される。またこれらの患者において局所麻酔を避けられない場合にはアドレナリン非含有(フェリプレシン含有)歯科局所麻酔薬の使用を考慮する必要もある。

  2014/03/03   ふくだ歯科